「性倫理」に言及せず
だから、キャスターの桑子真帆はこの数字を出して、「男性の側に責任があるとも取れますか」と、ゲストの日本大学医学部産婦人科主任教授、川名敬に水を向けた。すると、川名は「そういう性行動もあると思うが、今(梅毒が)流行(はや)っている中では、そう甘いことではない」と言葉を濁すだけ。乱れた倫理観を非難できなくなったのはNHKばかりではなさそうだ。
番組では「倫理」「モラル」という言葉が一度も登場しなかった。その理由は簡単。近年、NHKが「性の多様化」という言葉を使いながら、同性愛者などの「性的少数者」に対する差別をなくす運動に力を入れていることは、この欄でたびたび指摘してきた。
その運動を支えるのは、伝統的な性倫理やモラルなどが固定概念となって人を抑圧し、差別を生んでいるという捉え方。例えば、「性行為は男性と女性が行うもの」という伝統的な考え方が同性愛者差別につながり、「同性婚」の実現を阻んでいる、というように。だから「ワンナイトラブは性倫理に反する」と言えないのである。
NHKをはじめとしたメディアが性倫理を否定的に捉えるようになり、それが性の乱れを招いている。そこにマッチングアプリが登場し、さらに性の乱れを煽(あお)るという負のスパイラルが起きている。梅毒をはじめとした性感染症の拡大をこう俯瞰(ふかん)して見ると、NHKが「感染から身を守れ」というのはマッチポンプに等しいことが分かる。



