「梅毒から身を守れ」と言いつつ「ワンナイトラブ」非難できぬNHK

家族のイメージ(Photo by Jessica Rockowitz on Unsplash)
家族のイメージ(Photo by Jessica Rockowitz on Unsplash)

感染者は前年の1.6倍

「性の多様性」のパラダイムに固執するNHKを象徴するような番組だった。「急増なぜ? 梅毒“過去最多”の衝撃 感染から身を守るには」と題して放送した「クローズアップ現代」(先月25日)。梅毒拡大の背景に、いわゆる「ワンナイトラブ」(一夜限りの愛)の横行があることを指摘しながらそれを非難できず、性規範の崩壊に警鐘を鳴らせなかったのだ。

昨年の感染者数は1万3000人。前年の1・6倍で、現在の方法で統計を取り始めてから最も多くなった。まさに「緊急事態」。このままでは今年、どこまで感染拡大するか分からない。だから今、この問題を取り上げるのは時宜を得ている。

性行為でしか感染しない梅毒が急増する要因は明らか。性規範が崩れているところに、男女や同性同士の出会いのための「マッチングアプリ」が登場し、ワンナイトラブが当たり前のような風潮が広がってしまったからだ。

「(梅毒を)めっちゃ広めていた可能性はある。ワンナイトを続けている限り、かかってしまったらアンラッキーくらいの世の中なんじゃないかな」。梅毒に感染したある男性は番組の取材に応じ、悪びれることもなく言ってのけた。

「それでも止められないかも。(ワンナイトラブが)定着し過ぎちゃってもう普通ですね」という女性もいた。日本社会の性倫理がここまで落ちてしまったことに唖然(あぜん)としてしまった。しかし、NHKはそこには正面から切り込めない。梅毒をはじめ性感染症に感染する恐れがあるから「コンドームを付けましょう」というのが関の山だった。

興味深かったのは、梅毒の蔓延(まんえん)で男性の方がより責任が大きいことを示す調査結果が出たこと。「性感染症にかかった経験がある人の性行為の相手」は、男性の場合、51%が「不特定の相手」。一方、女性は16%。つまり女性の84%は普通に生活しながら、陰で良からぬ行為に及ぶ配偶者や恋人から感染させられた“被害者”というわけだ。