
自己認識能力に欠陥
中国政府はこのほど2022年末時点の人口を、前年比で85万人少ない14億1175万人と発表した。
読売は23日付社説「中国の人口減 習政権は実態を見ているのか」で、「中国政府の2019年時点の見通しでは、人口が減少するのは30年からのはずだった。それより8年も早くなったのは、政府が人口減の実態を正確に把握せず、見通しを誤ったことの表れだろう」と指摘した。この指摘は重要なチャイナリスクの核心を突いている。
組織や国家が生き延びるためには、的確な自己認識が不可欠だ。孫子も「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」と、何度戦っても、勝つためには敵の実力や現状をしっかりと把握するだけでなく、自分自身のことをよくわきまえることが肝要と説く。その意味では、国家を等身大に見る鏡を持たない中国当局の自己認識能力には致命的欠陥が存在する。
中国には李克強指数というものがある。かつて李克強首相が就任前の遼寧省幹部だった頃、信頼できる数値として挙げた「電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資残高」の三つを粉飾が利かない経済指標としたことがあった。
共産党独裁政権下の中国では、地方の役人が中央に上がるために実績を粉飾するのはよく見られることだった。このため中国での下からの実績報告は、思惑が絡み正確なわけではない。だが間違ったレールを走る機関車は、いずれ脱線を免れ難いように、間違ったデータを基に国策を練ると、とんでもないことが起きるのは必至だ。



