パレスチナで子供のうつが多発、ブレイクダンスでメンタルケアも

5人に3人自傷行為

その中で、大きな被害を受けているのが、自治区内の子供だ。特にガザ地区は封鎖が続き、子供のうつなどが多発しているという。

国連NGO(非政府組織)「セーブ・ザ・チルドレン」のパレスチナ自治政府担当ディレクター、ジェイソン・リー氏は昨年、「15年の封鎖と暴力の連鎖で、ガザ地区の子供の5人に4人が絶望、悲しみ、恐怖の中で生活し、5人に3人が自傷行為を行ったと報告されている」と指摘している。

ガザ地区では、「長年の戦争とトラウマから子供を精神的に支援」(イスラエルのニュースサイト「i24ニュース」)するために、ブレイクダンスを取り入れる取り組みが進められている。

ガザ地区はイスラム組織ハマスが実効支配し、非イスラムの文化や風習が「不道徳」として排除されてきた。映画や音楽などもその一部だ。

米国発祥とされるブレイクダンスも当初はハマスや住民からの反発を招いたという。

この取り組みを行っているのは、ダンスコーチのアフメド・グライズさん。子供の「恐怖をはねのけ、ストレスを発散する」ためのセラピーの一環として難民キャンプでブレイクダンスを教えている。

グライズさんは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)治療の資格を持ち、欧州で友人らと共に、パレスチナ支援の一環としてブレイクダンスショーを行ってきたという。

グライズさんは海外メディアに対し、「子供たちが私の所に来て疲れたと言う。弱っているようだ。十分に休めず、深い眠りも取れないからだ。一部は自分の体を傷つけ、人との交流を避ける子供もいる」と話している。

体を動かし心が安定

だが、「スポーツなどで体を動かすことで心理的に安定する」とグライズさんは訴える。

ユニセフ(国連児童基金)が昨年明らかにしたところによると、ガザ地区の子供約50万人が精神的ケアを必要としているという。地区内の子供の半数近い数字だ。

(本田隆文)