中国崩壊論に反論する専門家

国家安全法や人権無視は度外視

韓国では「習独裁体制の否定的効果で『爆亡』する」と予測する向きもあるが、全氏は「むしろ資本主義プラットフォームを維持したまま開発独裁をしながら中短期的には相対的に高い成長をする可能性を念頭に置く必要がある」と見通す。

全氏の視点には人民を監視し縛る「国家安全法」や人権無視、宗教弾圧の「少数民族同化政策」などがないらしい。貧困から解放されて人民は満足し、消費生活を謳歌(おうか)して、党や国家に背かないのが中国人だと解釈しているようにみえる。

昨年11月、アパート火事でウイグル族の家族が死に、それがゼロコロナ政策で迅速な消火活動ができなかったからだとして、全国に抗議活動が広がった。「規模は過去数十年間で最大だ」と言われた。騒動に乗じて「習近平退陣」「共産党退陣」も叫ばれたから、すわ「第2の天安門か」と騒がれたが、政府がゼロコロナを取り下げると騒動は一気に萎(しぼ)んだ。行動制限を取り外し、春節(旧正月)には「21億人が大移動」するいつもの光景に戻っている。

しかし、その裏では「習近平退陣」を叫んだ者は治安当局に拘束されたり、きつくお灸(きゅう)を据えられたりしているが、正月気分でそれらが問題視されることはない。

こうした中国当局の巧妙な統制、開放経済の維持等々を見れば、中国経済専門家である全氏が、韓国は「最大の貿易相手国」中国との関係を一層深化させていくべきだと判断するのも無理からぬものがある。

だが全氏は「歴史的に中国が強くなった時、韓半島をそのまま放っておいたことがない」とも指摘する。「フリーランチはない」ことを韓国は忘れがちだ。

(岩崎 哲)