
贈賄側の摘発に移る
ある名刺交換の折、裏に黄金色の小さな丸が描かれているのをもらったことがある。相手は文筆を稼業としていた。思わず意味を尋ねた。すると与謝野晶子の歌をデザインしたものだという。
「劫初(ごうしょ)より造り営む殿堂にわれも黄金の釘一つ打つ」がその歌だ。世の初めから人類が営々として築き上げてきた文化的殿堂があるとすれば、自分もその釘(くぎ)一本なりとも打ち込みたい。しかし、それは錆(さ)びた釘ではなく、黄金の釘でありたいという気迫がこもった歌だ。
チャイナウオッチャーの分析を読む作業を30年近く続けているが、結構二番煎じものが多いのが事実だ。その点、中国分析では定評がある石平氏が5日付産経の自身のコラムで書いた「民間企業への収奪戦始まる」は、私が知る限り今回が初めての指摘であり、まさに中国分析で「黄金の釘」を一つ打ち込んだといっていいものだった。
「ハエも虎もたたく」反腐敗闘争で習近平総書記は、政敵を追い落とし皇帝のような独裁的権力を構築していった経緯があるが、石氏はその反腐敗闘争の焦点が、これから収賄側から贈賄側の摘発、懲罰に移っていくという。



