予算案社説で歳出膨張を批判し経済成長や活性化の視点乏しい各紙

予備費5兆に疑問符

通常2本のところを1本の大社説で掲載した日経は、「抜本的な制度改革やメリハリを利かせた歳出構造の刷新が遅れ、未来の成長のための投資余力が圧迫されている」とし、加えて「さらに気がかりなのは、これから諸課題に取り組むための支出増をどうやって賄うかの意識が薄れていることだ」と懸念する。

これらの指摘は確かに一理あり、本紙を含めほとんどの新聞が、事前に使途を決めない予備費が合計5兆円計上されたことに、経済の正常化が進んだにもかかわらず、コロナ禍が深刻だった前年度と同額だったとして疑問を投げ掛けた。

ただ、歳出入改革が足りない点は尤(もっと)もだとして、仮にそれが足りた場合でも、防衛費の支出増などに必要な財源が安定的に確保できるのか、できない場合は増税を認めるのか認めないのか。

日経は将来の消費税率引き上げも含め、痛みを伴う負担の課題から逃げてはならないとして増税の必要性にも言及したが、読売、産経は明確でない。特に産経は「防衛増税の時期や少子化対策の財源確保など先送りされた課題も多い」と指摘し、前述した通り、「安易な国債発行に頼らず…」との注文も付けているにもかかわらず、である。

増税は避けよと本紙

日経は「日本の経済成長を喚起し、競争力をつけ、諸課題を克服するために有効活用しなければならない」と財政の役割は重要と説いたが、成長や経済力強化について言及したのは日経と本紙のみで乏しかった。また、過去最高を見込む税収を確保するためにも、企業の賃上げに水を差す増税はできるだけ避けるべきだとしたのは本紙だけだった。

(床井明男)