
財政規律を問う各紙
新年最初の小欄執筆に当たり、今回は新年経済の展望を占う意味で重要な23年度予算案について取り上げたい。
まずは昨年12月下旬の各紙社説見出しを列挙する。24日付読売「歳出膨張に危機感が足りない」、朝日「後世に禍根を残すのか」、日経「将来世代へ財政の規律を取り戻せ」、産経「歳出入改革がまだ足りぬ」、26日付東京「査定なきに等しい膨張」、27日付本紙「税収増へ一段の経済力強化を」――(毎日は予算案の中でも防衛予算だけについての論評のため割愛する)。
朝日の「後世に禍根…」とは、防衛費の拡大でその「歯止めをはずし、財源の裏付けなしに大きく増やす道に踏み込」んだこと、また「財政民主主義を掘り崩す」巨額の予備費計上を続けたことに対して「取り返しのつかない過ちを犯した」と批判し、その修正を求めたものである。
要するに、各紙の論評は本紙を除き、保守系紙、左派系紙いずれも歳出の増加について批判し、政府に財政規律を問うものになっている。中でも、朝日は特に、安全保障観の違いから、先述のように、防衛費の増加を中心に語気の強い批判を重ねる。
それだけに、左派系紙の批判が強いのは、その妥当性はともかく分かるが、保守系紙でも強いのはなぜか。
例えば、読売は厳しい安全保障環境から「防衛費の増額は当然」とし、「社会保障費の増加もやむを得ない面がある」と歳出の増加には一定の理解を示すも、「それだけに、その他の歳出について、効率化の努力を尽くすことが重要である」とする。
歳出の3割以上を借金に頼る状況が常態化して、国の長期債務残高は1000兆円を超え、借金は増える一方であり、「将来世代に負担を先送りするばかりの財政運営を続けていいわけがない」「日本銀行が金融緩和策の修正を決めたことで、今後は金利上昇による利払い負担のさらなる増加も懸念される」というわけである。
産経、日経もほぼ同様。産経は「軍事的な緊張など不測の事態に備えるには財政余力を高めるべきだ」として、安易な国債発行に頼らず財政需要に応えられるよう不断の改革を岸田文雄政権に求める。



