抑止力にもシェルター整備にも触れず新年から空想的平和論語る朝毎

整備促進訴える産経

産経の榊原智論説委員長は元日付「年のはじめに」でこう言っている。「反撃能力保有をめぐり一部野党や多くのメディアは『相手国が発射する前の反撃能力は先制攻撃になる恐れ』や『歯止め』を専ら論じている。核ミサイルも抑止しなければならないのに、バカも休み休みに言ってもらいたい」。その通りである。核ミサイルなら「ささやかな日々の暮らしを破壊し、生身の肉体を焼きつくす殺戮(さつりく)」(朝日社説)はウクライナの比でなくなるはずだ。

榊原氏は「(ロシアのような)非人道的な戦術を中朝両国が有事に真似(まね)ない保証はない。台湾のように、日本でも地下シェルター整備は急務だが、内閣に整備促進の担当相がいないのは疑問だ。政府はウクライナや台湾、欧米、イスラエルに調査団を派遣し、国民保護の手立てを学ぶべきだ」と指摘している。

シェルターが存在しない日本の場合、「避難するか、否か。『命をかけたくじ引き』」すらできない。朝日が専守防衛を唱えるならシェルター整備推進の先陣を切ってもよさそうだが、そんな話は微塵(みじん)もない。戦争を止める英知としての反撃能力(抑止力)に頭が回らないのは軍事=悪の非武装論が根底にあるからだろう。これではいくら英知を巡らしても骨折り損のくたびれ儲(もう)けである。

「平和ボケはどこへ」

毎日は元日付から「『平和国家』はどこへ」と題するシリーズを始め、1回目は日本と台湾の間の「軍事連絡ルート」を問題視している。記事は安保関連3文書が「盾」だけでなく「矛」を持つ方向にかじを切ったとし、「『平和国家』はどこへ向かうのか。そこに危うさはないのか」と言う。

思わず「平和ボケはどこへ」と読み違えた。「平和国家」はいったい誰がもたらしてきたと考えているのか。米軍の圧倒的なプレゼンスがあったればこそ、である。毎日にも抑止力が消え失せている。北朝鮮が年初からミサイルを飛び交わせたが、朝日を筆頭とする左派紙の空想的平和論も飛び交いそうな新年である。

(増 記代司)