技術の先行き見失う
当時の日本の業界再編の経緯はその通りだ。しかし記事にはない点にも留意が要る。まず再編以前の過当競争は負の面ばかりでなかったこと。日本企業は国内で厳しい競争を繰り広げる一方、その競争力で生んだ製品を世界市場に向け輸出した。この過程で日本企業全体の国際競争力は飛躍的に高まり、その後、日本製のメモリが世界を席巻するまでになった。
３グループへの再編は、ＩＢＭに対抗した新機種の開発を進めるためだった。確かに政府の補助金配分が効率よくなされ、日本企業が得意とする既存技術を集中投資し製品化が実現し、ＩＢＭ追い上げに有効な戦略となった。日本半導体の名も世界に知られた。しかしその後ＩＢＭによる世界市場の支配力が衰えを見せると、その追随に励んでいた日本メーカーも敗者となった。
結局、日本は技術の先行きを見通せず、投資の方向を見失ったのだ。また技術・開発力に対する慢心があって、その間の他国の技術力伸長を見過ごしてしまった。日本の技術者一人一人にもおごりがあったのだろう。湯之上隆著『日本「半導体」敗戦』によると、当時「極度に専門化した要素技術者」の集まりとなってしまい、「互いの技術の“擦り合わせ”ができなかった」という。今日、日本の一部大手メーカーが抱えている製品欠陥問題の原因にも通じる。管理者と技術者の意思疎通の悪さだ。ＴＳＭＣを中心とした台湾の半導体業界の再編は、単に過当競争の解消でなく、技術の発展方向を見極め、技術開発力の向上を目指すことのできる体制づくりでなければならない。
