魔女狩りはどこへ向かうか
言い換えれば、岸田首相は、山上徹也容疑者によるテロによって火が付いた魔女狩りを恐れ、それに屈したと言える。その後、教団やその関係団体と一切の関係を絶つ決議を可決する地方議会が出たことを見れば、岸田首相の断絶宣言は、少数者を排除する全体主義に通底する行為だったのではないか。
「保守主義の父」として知られる英国の政治思想家エドマンド・バーク(18世紀後半に活躍)は著書『フランス革命の省察』で、「フランス革命派は、宗教を迷信と片付けているようだ。しかし宗教こそは文明社会の基盤であり、あらゆる善と幸福の源である」と宗教の重要性を説いた。さらに、「民主主義が機能するためには、民衆はエゴイズムを捨てねばならない。宗教の力なくして、これらはまったく不可能と言える」とも述べている。自由と秩序のバランスを求めた彼の考察には現在でも通じる叡智(えいち)が含まれている。
教団バッシングの一端を担った朝日新聞でさえ12月1日付で、「私は旧統一教会をめぐる解散請求に向けた動きは過剰反応に見えます」との政治学者(法政大学教授)の河野有理氏のコメントを紹介した。さらに河野氏は「『反社会的集団だから潰してしまえ』という世論に流され、宗教団体解散のハードルが著しく低くなってしまうのは危険です」とも語っている。
旧統一教会に対する解散請求権問題と統一地方選挙が待ち受ける新年を俯瞰(ふかん)してみれば、日本が民主主義の原則を何とか曲げずに持ちこたえるのか、それとも全体主義のドアを開け、一歩足を踏み入れるのか、それが鮮明となる年である。
(森田 清策)



