大局観なき防衛論議
だが、外交が威力を発揮するのは軍事力や経済力など国力をバックにした裏付けがあるときであり、対話が効力を持つのは価値観を同じくするときだ。紛争解決の手段として外交と対話だけに頼り、武力をあくまで否定する「平和主義」は空想的ユートピアでしかなく現実を直視していない。それどころか、武力行使や武力を使って威嚇する側の罪から目をそらさせ、責任の所在をあいまいにさせる。
さらに言えば、東アジア安全保障の大きな課題は、中露、北朝鮮が核戦力強化を図る中、核の安全保障をどう担保するのか、米海軍力の相対的低下によって崩れつつあるパワーバランスをどう立て直すのか。そして中国の台湾侵攻リスクが高まる中、当事者である台湾との連携がどうなされるのか。これらに関し、未だ本格的な議論がないことに大局観なき防衛論議の不毛を痛感する。
(池永達夫)



