警察官41人が重軽傷
実際はまるっきり違う。そのことは当時の朝日を読めば一目瞭然だ。52年6月26日付は、竹ヤリ、コン棒を持った学生、朝鮮人の一団が25日未明に「(国鉄の)吹田操車場になだれこんで、警官から奪ったピストルを発射したり、派出所を襲って破壊したり、火炎ビンや硫酸を投げつけるなど暴行」を働いたと記している。
吹田事件は騒擾(そうじょう)罪(現在の騒乱罪)こそ問われなかったものの警察官41人が重軽傷を負ったれっきとした暴動で、在日米軍の活動を妨害し北朝鮮軍を助ける革命闘争だった。記事にはないが、金時鐘氏は当時、日本共産党の党員で在日朝鮮人の「祖国防衛隊」に所属し、党指令で吹田事件に参画していた。
「91歳の男性弁護士」は吹田事件の主任弁護人だった石川元也氏で、共産党系の自由法曹団団長や日本国際法律家協会副会長などを歴任した筋金入りの活動家弁護士だ。吹田事件への反省の弁がないどころか、騒擾罪が無罪だったことだけを持ち出し「自由の希求」「表現の自由は守られた」と自賛している。
朝日記事には「平和運動の歴史に詳しい沖縄大学の小林武・客員教授」が石川氏と同様に「表現の自由は守られ、下支えする『抵抗権』が実質的に認められた」とコメントしている。小林氏は共産党の隠れ蓑(みの)である「全国革新懇」(平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)の代表世話人だ。暴力闘争を「抵抗権」と言い換え、その上、認められたとしている。これこそ暴力革命の正当化論である。
共産党が暴力革命路線を隠し持っていることは明白だ。それを朝日は何の疑問も抱かず、美談にすり替えている。治安当局が共産党への見解を変えない所以(ゆえん)である。
(増 記代司)



