「ミサイル不感症」が問題に

軍の情報感度・戦闘練度が低下

北朝鮮が10月4日、「弾道ミサイル」を日本列島を飛び越えて太平洋へ撃った時、日本政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)を発信して警戒を求めた。だがミサイル通過後の発信だったり、警報が届くべき地域で発動されなかったり、ミサイル軌道とは数百キロも離れた小笠原諸島にまで発令されたりと、失態が重なった。

日本の様子を見ていた韓国は過剰反応とドタバタぶりを冷笑していたが、逆に今、韓国の「不感症」が問題になっている。

月刊中央(12月号)に国家情報院委員を務め、国家安保戦略研究院長、高麗大北韓研究所長を歴任した南(ナム)成旭(ソンウク)高麗大院教授が「金正恩の武力挑発今後のシナリオ」を書いている。

その中で南教授が危機感を示したのが韓国軍の情報感度と戦闘練度の低下だ。10月には先制打撃用ミサイルの発射を失敗したのに続き、11月には実射訓練で、韓国産の中距離地対空ミサイルの「天弓」が発射後10秒後に空中爆発、パトリオット地対空ミサイルは射撃前にエラーが発見され、発射が中止された。訓練中止は「北朝鮮徴発に対応する」ためとしたが、失敗続きで断念したのは明らか。

先端技術が詰まっている兵器の扱いは一朝一夕で練達するわけではない。不断の訓練で技術が維持されるが、南教授は「過去5年間、訓練しない軍隊の後遺症を克服する格別の対策を用意しなければならない」と嘆いた。「過去5年間」とは文在寅政権のことである。この間、対北警戒感は薄れ、緊張感は下がり、軍隊の士気も練度も落ちた。

北朝鮮が11月に鬱陵島(うつりょうとう)方面にミサイルを撃った時、空襲警報が発令されたが、南教授によると、「鬱陵警察署長は早期退勤してのんびりと家庭菜園で土をいじっており、住民と観光客はサイレンの意味が分からず待避所も探せず右往左往した」という。

いったん緩んだ警戒感を引き締め直したり、落ちた技量を向上させるのは並大抵の努力では追い付かない。まして日々進化する先端兵器の練達には厳しい訓練が必要だ。尹(ユン)錫悦(ソンニョル)政権になって、久しぶりに米軍との合同訓練が報道の前面に上がってきた。今までも米韓合同練習は行われてきたが、左派政権の思惑なのか報道分量が格段に違い、国民の目からは隠されてきた。

北朝鮮の7次核実験が取り沙汰されている中、新年、さまざまな記念日が控える北朝鮮ではどんな軍事行動が準備されているか分からない。同記事は、韓国軍と国民の警戒感を引き締めとともに、政権の締め直しが必要だとの警鐘である。

(岩崎 哲)