旧統一教会問題 呆れる野党案は明らかに憲法違反

荒唐無稽な論理適用

野党案だが、その骨子は①寄付の上限は年間の可処分所得の4分の1が目安②取り消し権は家族など第三者が行使できるようにする③刑事罰を設ける④「マインドコントロール」の明文化だ。まず①について憲法違反を指摘したのは宮崎政久・自民党法務部会長。「寄付行為自体を制約することになるので、財産権を保障した憲法に違反するリスクがあまりにも大きい」。だから「悪質的な寄付の勧誘行為を禁止した方が法制上は現実的だ」と述べた。高井氏も同意見だった。

一方、長妻昭・立憲民主党政調会長は、野党案は寄付の上限設定といわゆる「マインドコントロール」の明文化がセットになっていると説明した。なぜなら、悪質な寄付の勧誘行為を禁止するだけでは「旧統一教会の問題の本質には迫れない」というのだ。

例えば、10年前にマインドコントロール状態に陥ったとすると、その後は毎回脅かしなどの悪質な勧誘行為がなくても「自動的に」献金を続けるのだという。呆(あき)れて物が言えないとはこのことだ。野党の国会議員たちがこんな荒唐無稽な論理を本気で信じているとは。

だから、高井氏は批判した。「(マインドコントロールを)日本語で言えば、心理・精神操作ということになるが、その概念がはっきりしない」とした上で、「10年間、熱烈に信仰している場合、それが純粋な信仰なのか、心理操作の結果なのか、どうやって判断するのか」。例えば、母親が信仰心から多額の献金をしたとする。それを子供や他人が「マインドコントロールにかかっているから精神鑑定を受けろ」という話になる。「これは法律が内心の自由に手を突っ込むことだから、明らかな憲法違反」と断言した。

要するに、野党案は、教団の信者が行った献金は詐欺の被害行為だから、できる限り広く取り消しできるようにする必要があると考えて法案を構成している。そのためには、信仰の敵対概念であるマインドコントロール概念を入れた方が都合がいいという発想。しかし、そんな法律を制定したら、他の宗教団体やNPOなどにも適用されるから混乱必至である。

権利行使の人限定を

仮に献金の取り消しを認めるとすれば、マインドコントロールの結果としての行為だからではない。高井氏が指摘したように、子供や配偶者など扶養を求める権利がある人間の権利行使に限定すべきだ。そうでなければ、内心の自由と財産権の侵害という二重の憲法違反になる。被害者への感情移入が激しく、その救済にばかりに目を奪われて視野狭窄(きょうさく)に陥るとともに、マインドコントロール概念によって判断力を奪われる野党議員ばかりでは日本の政治レベルが知れよう。

(森田清策)