運用の道筋は見えず
その新開発候補は、革新軽水炉など5種。多様な技術で選択肢は多いが、どれも運用実現までの具体的な道筋は見えていない。それを捉え、NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長は「次世代と言いながら、実は現行世代と同じ原子炉(加圧水型炉)が使われるのです」「(前略)機能をいくつか付ければ“革新”だというわけです。先進的な技術で安全性が確立された原子炉のように、国民が誤解してしまう恐れがあります」と批判する。それを言うなら、開発を遅らせてきたのはどの勢力なのか、問いたい。今、技術開発が進む機会を得られたことを歓迎すべきだ。
また記事では、「有力な建設候補地は『関西電力の美浜原発(福井県)4号機』だと松久保氏は見る。日本海側だから北朝鮮のミサイル攻撃の標的になりかねないが、それは見て見ぬふりか」と言って増設を牽制(けんせい)している。敵におもねる“敗北主義”もいいところで、あきれる話だ。
実証のない樋口理論
一方、サンデー毎日10月30日号は「岸田首相よ聞け!『なぜ私は原発をとめたか』」と題し、約8年前に福井の大飯原発の運転停止を命じた、当時の福井地裁裁判長の樋口英明氏が、その理由である「樋口理論」を説いている。
基準値振動が地震観測記録よりも高ければ、建設すべきでないという樋口氏の持論。あくまでもコンピューターシミュレーションに基づいた耐震基準にすぎず、大規模建造物で実証はない。差し止めを命じた樋口氏の判決も控訴審で「危険性は社会通念上無視し得るまで管理統制されている」として取り消され、一転、運転が認められた。科学は経験と理性の統一体であり、確定された理論に基づきイノベーションを尽くすべきだ。
(片上晴彦)



