岸田内閣の支持率ジリ貧を受けて「12月の“逆ギレ解散”」を煽る文春

奇襲で延命を図る?

一方、新法が「骨抜き」になった場合、立憲民主党の泉健太代表は「内閣不信任案提出を視野に入れる」とジャブを飛ばしており、国会運営に暗雲が垂れ込める。

これを吹き飛ばす奇策が「12月解散」というわけだ。しかし国会の多数党があえて議席を減らしそうな選挙に打って出るか、それに、それほど国会運営が難航するだろうか、「数の論理」と批判するが民主主義の原則である多数決を粛々と推し進めていけばいいだけの話ではないのか。それでもあえて選挙をする理由を同誌は次のように説明する。

「まず野党の圧倒的準備不足」。奇襲は案外、岸田首相の得意技かもしれない。昨年の衆院選でも予測された日程を1週間前倒しして、野党に準備期間を与えなかった。

次に、東南アジア歴訪の飛行機を遅らせてまで処理しなければならなかった葉梨康弘法相の舌禍、亡き人の印で処理された後援会の政治資金収支報告書の寺田稔総務相、等々、「問題閣僚」の一掃の機になること。さらに難しい調整が待ち受ける選挙区の「10増10減」案処理前に解散を決めれば、区割り変更前の現状で選挙ができる。「岸田首相の延命という意味では、解散は有力な選択肢でしょう」と「政治部デスク」の見方を同誌は伝える。

選挙は「国民に信を問う」手段だ。同デスクは「実際、自公で過半数割れがないとの見方が有力」というから、過半数維持できれば、再び信任を得たということになる。岸田首相にとって好都合だ。「何より選挙に勝てば、統一教会問題をリセットできます」とまで見通す。だが、実際そうだろうか。岸田首相が12月に選挙を打つとすれば、国会提出に拘(かか)わる救済新法の骨格だけでもまとめているはずだ。それで信が問えるのか。選挙をやる以上、公明党の理解を得なければならず、その案にはおそらく野党は承服しないだろう。延命どころか、進退窮まることもあり得る。

安倍暗殺真相究明を

それに同誌は触れていないが「安倍暗殺の真相究明」が残っている。11月末には山上徹也容疑者の鑑定留置が終わり、結果次第では本格的な取り調べが始まる。多くの謎が残されているにもかかわらず、週刊誌をはじめメディアはなぜか真相究明に沈黙している。容疑者が何を供述するか、警察の都合のいいリークに誘導されずに、メディアはその真相を追うべきだ。

(岩崎 哲)