戦狼外交で信用失う
むしろ、危惧すべきは3期目に入った習近平氏をトップとする中国の政治体制であろう。東洋経済は今号で4人の識者を登場させ、これまで10年間の習近平政権の成果を20点満点で評価させているが、いずれも半分以下という厳しいコメントを出す。東京財団政策研究所の柯隆・主席研究員は、「これまでの(中国の)40年間の経済発展は主に経済の自由化の恩恵…。外交についてフレキシビリティーのない戦狼外交により、先進国を敵視し、大国としての責任を果たせなくなった」と10点を付ける。
また、ジャーナリストの田中信彦氏は「国力の伸長に伴う自信過剰、加えて党の誕生の原点であるナショナリズムの誘惑に引きずられ、…香港に対する『50年不変』の国際的公約を公然と反故にするなど、…世界から尊敬される豊かな超大国になれたかもしれないチャンスをみすみす逃した」として9点の評価を下す。対外的には戦狼外交で西側諸国の信用を失い、国内的には不動産バブルの崩壊で景気低迷に陥っている中国経済を習近平氏は立て直すことができるのか。
自由主義堅持明示を
ここで日本にとっての今後の問題は、米国と中国の動向である。
中国は「一つの中国」を盾に台湾への武力侵攻も辞さない構えを見せる。加えて「製造強国2025」をキャッチフレーズとして世界に対し優位性を持つ中国企業を育成し、35年には先進国レベルの技術大国を目指す。そのターゲットになるのが日本だ。東洋経済同号は日本の複合機を例に取る。それによれば、中国は今年7月、外国オフィス機器メーカーに対し、製品の設計や製造など全工程を中国国内で行うよう定める方針を打ち出している。
これについて同誌は「(中国政府は、)おとなしく従えば中国国内で優遇すると外国企業にささやき、技術を中国企業に共有させたのち、お払い箱にするのが常とう手段だ」(細貝昌彦・明星大教授)と指摘するも、他の記事では中国との付き合いについては、「経済安保に目を配りしつつ、中国との経済関係は発展させるべきであろう。米中新冷戦を日本が生き残るにはしたたかさと柔軟さが必要だ」(同誌)と正論ぶった言い方をする。ここで重要なことは、したたかに生き残るよりも日本の国是として、対外的に自由主義を堅持すること、さらに国家全体主義的共産主義とは一線を画すという姿勢を常に打ち出すことが重要だ。
(湯朝 肇)



