旧統一教会批判 時流とみて、メディアは思考停止

だれも定義・具体例を答えられない

その「時流」をつくり上げているのはメディアだろう。教団の友好団体である国際勝共連合の機関紙「思想新聞」(10月15日付)によれば、メディア各社から教団が「反社会的」団体として同連合の活動も一体だとする質問が連日のように寄せられたので丁寧に答えてきたが、一方的に「断罪」する言説が繰り返されているので新聞やテレビ局などメディア35社に「反社会的勢力とは何か」「『関連団体の活動が新たな被害を生み出す』という根拠を具体例で示してほしい」などと問う公開質問状を送信した。

これに回答を寄せたのは朝日とNHKのみで、朝日は質問には答えず「霊感商法や高額献金などが問題視された宗教団体に関しては社会的に大きな議論になっている」ため取材報道するとしただけ。NHKは「個別の質問には回答せず」とし、NHK放送ガイドラインに基づき放送していると返信してきたという。

報道各社は「反社会的勢力」の定義も、関連団体の活動が被害を生み出すという具体例も、どれ一つだに示せなかったわけだ。それでいて扇情的報道を繰り返しているのは、それこそ「時流とみるや思考停止」して駆け出している典型ではないか。議論になっているから取材報道するという朝日の回答に至っては、自らのマッチポンプを認めたに等しい。「議論」を起こしているのが当の朝日自身だからだ。

その一つが20日付の「教団側、自民議員に『政策協定』」だろう。1面トップから2面へと展開させる大報道である。「教団側」とは友好団体の世界平和連合などのことで、選挙で支援する見返りに「教団側が掲げる政策への取り組みを求めた」としている。団体が議員を応援する際、政策協定などを結ぶのはごくありふれた話だ。それも憲法改正など自民党の政策と重なっている。それをさも大ニュースの「時流」に仕立て上げ、翌21日付社説で「自民と教団 『政策協定』全員調査を」とけしかけている。

憲法違反の「あなたは信者か?」

マッチポンプに乗って思考停止すれば「宗門改めて」も平然とまかり通るようだ。立憲民主党の打越さく良参院議員は国会質疑で山際大志郎経済再生担当相に「信者か」と問い詰めた。憲法の「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」(第20条)は自らの信仰について沈黙する自由も含まれる。それを公の場で「お前は信者か」と問うのは明らかに憲法違反である。この発言を問題視したのは産経だけだった(22日付産経抄など)。

どうやらわれわれは「相当な奇国」に住んでいるようだ。

(増 記代司)