電力の安定供給語らず原発運転延長を「利用論」に矮小化する左派系紙

電力逼迫招いた審査

運転期間延長の背景にある電力需給の逼迫や温暖化対策の強化については、発足から10年を迎えた規制委の審査状況が影響している。

規制委は2011年の東日本大震災での東京電力福島第1原発事故を受け、翌12年9月、民主党政権下で発足。事故を教訓に重大事故対策の義務付けや地震・津波想定の厳格化など「世界一厳しい」とされる新規制基準に基づき、再稼働の申請された原発を審査している。

ただ、この10年で電力会社は27基の審査を申請したが、「合格」したのは17基、再稼働したのはこのうちの10基のみである。再稼働数が少ないのは、電力会社が安全性の証明に時間を要していること、また、規制厳格化による安全対策費用の増大で再稼働を諦め15基(福島第1を除く)が廃炉となったことなどがある。

その影響で引き起こされた端的な例が、電力需給の逼迫であり、地球温暖化防止へ脱炭素化目標達成の困難さである。

今年3月には天候悪化と火力発電所の停止で東北、東電管内で逼迫警報が発令。6月には猛暑で東電管内で逼迫注意報が出され、国民に節電を呼び掛けざるを得なかった。

規制委10年でも二分

10年を迎えた規制委については、保守系紙では産経が9月22日付、本紙が同30日付、左派系紙では東京が10月10日付で社説を掲載。先述の運転期間延長で掲載した朝日、日経、毎日、本紙でも規制委10年に触れているが、論調はやはり、保守系紙と左派系紙で見事に分かれ、保守系紙は「原発動かす審査」(産経)や「円滑な審査」(本紙)を求め、左派系の東京は「原点を忘れるなかれ」とした。

この10年での課題、問題点については、通常2本の枠に1本の大社説で論じた産経が詳しく論じているが、この問題でも左派系紙は新規制基準を、憲法9条よろしく法改正は安全を蔑(ないがし)ろにするものと決め付け、課題に対処し得ないままでいる。

(床井明男)