妨害強まり出漁不可
その大手紙の大所高所から論じる視座の違いも興味深いが、今回は現場に近い鹿児島のローカル紙・南日本新聞ならではの「体毛的センサー」を伴った迫真のリポートを取り上げたい。
11日付同紙記事「尖閣国有化10年 中国の妨害強まり2年前から出漁できず」で、「好漁場の尖閣諸島周辺では鹿児島市喜入と指宿市の漁船計5隻が瀬物の一本釣りをしていたが、中国海警局による妨害が強まったおととしから出漁を見合わせている。中国艦や漁船が頻繁に行き交う中、漁業者は『死活問題だ…』と訴える」と書き出し、尖閣諸島周辺海域の現場では「視界に、中国軍のルーヤン3級ミサイル駆逐艦が入った」と記す。
同記事は1980年代、ヒメダイやチビキなどの高級魚が釣れる尖閣海域を開拓した喜入と指宿の瀬物一本釣り船団が、中国の妨害が強まって2年前から出漁できなくなっている現状を鮮明にリポートすると同時に、問題の本質をも浮き彫りにしている。
10年間で隻数が逆転
10年前には、海上保安庁が持つ大型船は51隻と中国側の40隻を上回っていた。海保の船が盾となって、尖閣の実効支配を狙う中国艦船の排除が可能だった。
中国はこの10年間で、艦船数や侵入時間を徐々に増やす「サラミ戦略」を実行。近年は台風でなければほぼ連日、現場に居座り既成事実化を図ろうとしている。
隻数は逆転し、大型海警船は132隻(2021年)と海保の倍近くになった。数が膨らんだだけではなく、退役した軍艦を海警船として使い、大砲や機関砲など軍艦並みの装備を持つ。なお中国は昨年、海警法を施行、主権を侵害したと判断した外国船への武器使用を認めている。
何より海警局の実態は軍だ。中国は4年前、海警局を人民武装警察部隊(武警)の傘下に置き、軍の最高意思決定機関の中央軍事委員会の手のひらの中で動く体制に改めた。
南日本新聞が尖閣現場に、中国軍のルーヤン3級ミサイル駆逐艦がいたことを述べることで、中国漁船団や海警船のバックに控えている中国人民解放軍の意思を鮮明に浮き彫りにしている。
ローカルパワー恐るべし。
(池永達夫)



