新たな発見があるNW日本版「世界が称賛する日本の暮らし」特集

社会の仕組みに違い

だが、これだけではない。「モントリオール理工科大学のオーウェン・ウェイグッド准教授」は社会の仕組みそのものが違うと指摘する。同准教授の住むカナダでは子供の通学は保護者が車で送迎する。米国など多くの国でそうだ。これは安全を「通学する側、子供側」で確保している格好だ。しかし、日本は車など「危険をもたらす側に、安全に注意を払う義務があると考え」ているというのだ。

指摘されて、日本人としては初めて気付く視点だ。社会や地域が子供を守るのは当然だとの考えが社会全体で共有されているから、児童生徒の脇では車は徐行し、注意を払う。ところが、カナダなどではそれが逆で「安全を確保する責任が子供や弱者に転嫁されている」というのだ。

このほか、外国人が指摘する「ニッポンの暮らしやすさ」を同誌は列挙する。医療保険、食べ物の多様さ、物価の安さ、「食育に体育に茶道、世界に誇る教養教育」、狭小建築の“美学”、等々だ。これらを外国人の視点から語らせている。

同誌でリレーコラムを担当するイラン、フランス、中国、米国のライターによる座談会も載せ、24㌻に及ぶ大特集である。

相手思いやる優しさ

この特集で韓国人が登場するのかは関心事の一つだった。カン・ハンナ氏。「歌人、タレント、国際文化研究者」の肩書で「この空の下、11年間暮らしてきた」の記事を寄せている。

「ありがとうと話しかけたらコマワヨと答えてくれた日なたのおじさん」

多様性をカン氏は仏教用語の「和顔愛語(わげんあいご)」と表現した。「穏やかな笑顔で親愛の情のこもった言葉を交わす、またはほほ笑みと愛情ある言葉で人に接する」ことと説明した。来日したての頃、「ありがとう」と片言で挨拶(あいさつ)したら、「コマワヨ」(ありがとう)と韓国語で答えてくれた。

「『日本で頑張っているんだろうな』『少しでも寄り添いたい』という大きな優しさのある方だったと思います」「相手のことを考えて言葉を交わせば全世界が平和になるのにと思うのです」

相手のことを考える優しさ、まさにこれ故に外国人たちは日本を好きになり、暮らしたくなるのだろう。発見もある特集だ。

(岩崎 哲)