日本の製造業は「東の正横綱」だとし拠点の国内復帰訴えるエコノミスト

海外進出で技術流出

こうした日本の強みに対して、長内厚・早稲田大学教授が同誌のインタビューに答え、日本企業がこれまで中国に移してきたモノづくりの拠点を、日本国内に戻すことが重要だと指摘。「中国で製造した場合、税関で物流が止まるリスクを考慮すると、もっと日本で製造したほうがよいだろう。日本の高度成長を支えたのはモノづくりだ。海外進出を継続したことでノウハウが海外に出てしまった」と日本の技術流出を憂い、さらに「家電や自動車などさまざまな製品は今後、通信でつながっていく。通信の情報を国が随時、民間企業に対して開示するよう請求できる中国で作っていいのか。…日本は国を挙げて国内でモノづくりを再興するべきという流れが必要だ」と強調する。

中国は15年に「中国製造2025」を打ち上げ、25年までに製造強国の仲間入りを果たし、建国100年の49年までに「製造大国」を実現するとして着実に重点強化産業を育成している。そうした点を考えれば、長内教授の指摘は至極当然のことである。

欧州連合(EU)においては、数年前から電池や半導体など戦略的な重要物資のチョークポイント(その“点”を押さえられると死活に関わる)を分析し、特定国への依存度を低減させ、なおかつグリーンやデジタル分野への移行促進と域内のイノーベーションを加速させるための支援を掲げている。

原点に立ち返る必要

今回のロシアのウクライナ侵攻によってEUはサプライチェーンの見直しと、さらなる競争力のある新産業育成を図ってくることは確実だ。自由主義と国家社会主義という対立軸が明確になり、さらに自由主義経済の歪(ひず)みが増しつつある今日、わが国としては開発製造の拠点を国内に戻し、もう一度「モノづくり大国」としての原点に立ち返る必要がある。

(湯朝 肇)