政治闘争丸出しで生活保護を自民党批判に使う朝日の筋違いな社論

不正受給の実態無視

これに対して朝日は政治闘争丸出しにこんな見出しを付けた。「生活保護判決 自民党の責任も重大だ」。厚労省を飛び越えて矛先を自民党に向けている。それも安倍晋三元首相批判である。いわく「安倍政権下での生活保護費の大幅な減額に、司法から改めてノーが突きつけられた」と。

朝日によれば、自民党が野党だった2012年末の衆院選で生活保護水準の1割カットを公約に掲げたことが「デフレ調整」の背景にある。当時は「生活保護たたき」の風潮が広がっており、「自助」に軸足を置いた自民党はその流れに乗り、「一部の政治家にはあおるような言動もあった」などと批判のトーンを上げている。明らかに参院選を意識した自民党叩(たた)きだ。

だが、朝日は当時の生活保護の実態を完全に無視している。10年度の不正受給は約2万5000件、128億円に上り、生活保護を受けるために偽装離婚したり、年収1億円もあるのに生活保護を受けていたりするなど悪質な事例が数多くあった。年収5000万円あるとされる人気お笑い芸人の母親が生活保護を受けていて、それがメディアで露見するまで放置されていた。一部では「生保天国」とさえ呼ばれた。

大分県別府市では受給者数が市民1千人当たり約32人で、県平均(約17人)の2倍近くと突出しており(13年度)、そのうち少なからずギャンブル依存症者がいた。市職員が市内13のパチンコ店と市営別府競輪場を巡回したところ、受給者25人を見つけ、指導している。

こういう実態への批判を朝日は「『生活保護たたき』の風潮」とあしらうように言うが、れっきとした社会問題だったのだ。ちなみに別府市の事例について朝日は自民党改憲案批判(16年4月13日付)で取り上げ「公の秩序 生き方規定、息苦しくないか」とパチンコ店通いの受給者を擁護していた。

共産党との共闘か?

それにしても生活保護を自民党叩きに使うとは、よほど批判材料がないのか、それとも争点ずらしか、はたまた共産党との共闘か。いずれにしても朝日の筋違いな社論である。

(増 記代司)