「言うだけ番長」朝日
この空母「福建」の進水式で、社説を張ったのが朝日と日経だった。
朝日は23日付社説「中国の空母 緊張高める軍拡やめよ」で、「中国の急速な軍拡は近年、周辺国に強い不安と疑念を与えてきた」とした上で「不信の連鎖が生む軍拡競争に勝者はいない。緊張が高まり、いったん衝突が生じればその先にあるのは破滅しかない。中国指導部は自らの行為の危うさを強く認識すべき」として、危うい軍拡路線の放棄を迫った。
ただ、これは朝日特有のレトリックで、一見もっともなことを言うだけの朝日版「言うだけ番長」でしかない。
日経は19日付社説「警戒すべき中国新空母『福建』」で、「リニアモーターを使って短い甲板から頻繁に艦載機が発進できる電磁カタパルトを初めて採用した」とし、「技術面でも米海軍が持つ最先端の空母関連システムに近づき始めた」ことに警戒を怠ってはならないとした。
ただこの指摘は、各紙ともニュース面で取り上げているテーマで、日経独自のものではない。
日経らしいのは観念的言論に終始する朝日と違って、リアリズムに即した論陣を組んでいることだ。同社説で「日本は適切に防衛力を整備しながら、様々な機会をとらえて中国に自制を促す必要がある」と述べ「裏付けとなるのが、日米同盟のほか、インドとオーストラリアを加えた4カ国の『Quad(クアッド)』、日米韓の連携である」として重層的な安保の枠組み整備の重要性を訴えた。
求心力を高める狙い
なお、台湾大手紙「自由時報」は、習政権がこの時期に「福建」をデビューさせたことにつき、今秋の中国共産党大会を前に「民族主義をあおり、政権の求心力を高める狙いがある」(18日付)と指摘し、新型空母の進水は、軍事的意義より政治的思惑が大きいことを示唆した。
朝日・日経の社説には、どちらもこの視点が欠落している。
(池永達夫)



