連合赤軍事件50年、革命思想の危険性“総括”しなかった大谷氏

奪い取られた人間性

リンチに加担しながらも、あさま山荘事件の1カ月前に連合赤軍を離脱した岩田平治に対するインタビューが印象に残る。永田洋子と共に最高幹部だった森恒夫が主導した総括の論理、つまり弱さを暴力で叩(たた)き出し革命戦士に育てるという論理を誰も論破することができずに集団リンチに発展したという。岩田はこの論理に「感性的に付いていけなくて逃げ出した」と告白した。岩田に人間性が残っていなかったら、さらにリンチを繰り返すか、殺される側に回っていただろう。

さらに、岩田は警察に出頭する前に叔父に言われた言葉が胸に刺さったという。「お前たちは人民を幸せにするとか、世のため、人のためとか言ったけれど、1人でも幸せにしたことがあるか」と。5年間の服役を終えて社会復帰した岩田は現在、趣味で子供たちのために、木のおもちゃ作りをしているという。

ここまでは良かった。しかし、筆者が首をひねったのは番組の最後に、大谷が行った事件についての“総括”だ。学生たちが凄惨な事件を起こした背景には、彼らから人間性を奪い取った革命思想の不気味さがあったはず。しかし、大谷が言及したのはそこではなかった。

「50年前、私と同世代の若者が引き起こした連合赤軍事件を振り返ると、組織というものの恐ろしさを感じる。その組織を国家と置き換えたとき、また別の景色が見えてくるはず。自国民の幸せというお題目の下に、他国を侵略し、他国の命を奪う。やがてそれはそうした国家を守る、国家のための国家となって、自国民の愛国心を煽(あお)り、それに沿わない国民の自由を束縛し、時には命まで奪ってしまっている。国際社会も一歩間違えたら、同じ過ちを繰り返す」。連合赤軍事件はそれを示唆しているというのだ。

また、「多くの命を奪い、社会を不安に陥れた事件を許すことはできない」としながらも「ただし、一点、若い彼らが追い求めた自由で平等で、平和でみんなが幸せになれる社会を願っている」とも。