高齢者の役割は子育てと地域の安定化

人間は100年持たない?

世界的に宗教の退潮が言われるが、複雑化する社会であればこそ、宗教の出番ということだろう。筆者の子供時代は寺や神社で遊び、祖母から「悪いことをしたら、地獄に落ちるぞ」と脅されながら育った。こうした社会環境が死を前提にした道徳教育になっていたのだ。しかし、死者数は増えても、葬儀は簡素化され、遺族が死者とともに過ごす時間も短くなっている。これでは、若者から死と人生を考える機会を奪っているようなものではないか。

一方、高齢化とともに少子化も進んでいる。小林さんはこの問題にも触れ「人間の能力は上がっていないのに、インターネットの通信速度を含めて、周辺環境の変化のスピードが速くなっていることが過度のストレスになっているのも一因ではないか」と分析。少子化の背景には、ITストレスから人間に心の余裕がなくなっていることを挙げた。そして「そもそも誰かと付き合って子供をつくるというのは原始的な行為である。現代的なスピード・効率重視の発想が進んでいけば、残念なことに、人間は100年持たないと私は考えている」と、不吉なことを述べている。

気の遠くなるような時間を費やして出来上がった人間の生き物としてのメカニズムに、人間が急激につくり上げた環境にズレが生じているのは確かだろう。「ヒューマンフレンドリー」な社会をつくり、人間の原始的なメカニズムをどう復活させるのか。人類は歴史的な分岐点に立っていると言えよう。

森田 清策