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超高齢社会は多死社会
厚生労働省が25日発表した人口動態統計の速報値によると、昨年1年間の死者数は145万2289人で戦後最多となった。
戦後、最も年間死者数が少なかったのは1966年の約67万人だから、昨年はその2倍超という計算だ。65歳以上の人口が総人口に占める割合を示す高齢化率が21%を超え、わが国が「超高齢社会」に突入したのは07年。高齢化率は年を追うごとにアップし、20年10月の時点で、28・8%に達している。高齢者が増えれば当然、死者数も増えるから、超高齢社会は「多死社会」でもあるのだ。
人が亡くなることは悲しいことには違いないから、可能なら避けたいというのが人情だろう。しかし、多死社会は悪いことばかりではない。人の死に向き合う機会が増えることは「死とは何か」を考える機会を得るという利点がある。「死生観」という言葉があるように、先に死を考えると、生き方がそれについてくる。
論壇各紙が先行き不透明なウクライナ情勢の特集を組む中で、「中央公論」6月号は「老いと喪失 死と向き合う思想」と銘打って、死と生を考えさせる特集をメインに据えている。多死社会の中で、死に向き合わざるを得ない人が増えているからなのだろう。



