【社説】こどもの日 未来の希望を産み育てよう

こいのぼり

きょうは「こどもの日」。子供は未来を担う、将来の主役である。子供がいなければ、未来への希望はない。子供を産み育てることは、希望を育てることであり、これほど尊く素晴らしいことはない。

出生数が80万人割り込む

総務省が算出した4月1日時点の外国人を含む15歳未満の男女は、前年より30万人少ない1435万人。総人口に占める割合は11・5%で、49年連続の低下となった。都道府県別(2022年10月1日時点)では、2年連続で全都道府県で子供の数が前年より減った。

国連の推計(22年)などによると、日本の人口に占める子供の割合は人口4000万人以上の36カ国で最も低く、イタリアの12・4%、韓国の11・6%を下回っている。

昨年の出生数は初めて80万人を割り込むなど、少子化に歯止めが掛かっていない状況が続いている。子供を巡る最大の課題は、少子化対策である。岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」を宣言し、政府はその策定作業を進めているが、現金給付を柱とした子育て支援策だけで、産まれてくる子供の数が増えるとは考えられない。

まずは、結婚して子供を産み育てたいという希望を持つ若い人たちが、そうできるような経済、社会環境の整備が必要だ。生涯にわたって結婚を望まない人たちに対しては、結婚、出産の意義、それ以上にその素晴らしさを伝えていく必要がある。

これを個人の人生観への介入とみる必要はない。最終的選択権は個人にある。価値観の多様化や多様な家族などがもてはやされる現状に対し、伝統的な家庭の良さを訴えることはむしろ必要なことだ。どのように立派な親であれ、実際に子供を育てることで親となり、また一人の人間としても成長する。そういう意味で子供は、この国の未来のため、そして一人一人の大人にとって不可欠な存在である。

かつて幕末から明治にかけて日本を訪れた外国人たちは、日本人ほど子供を可愛(かわい)がり、子供を育てることを喜びとしている国民を見たことはないという感想を残している。そのような日本がなぜ、子供が生まれない国になり、ひどい児童虐待が増える国となったのか、われわれは考える必要があるだろう。

特に、伝統的な価値観や家族を否定してきた戦後の社会思想をもう一度検証し直す必要があるのではないか。子育ての困難や経済的な負担などが強調されるが、子供を産み育てることの喜び、素晴らしさをもっと伝えるべきである。

福祉において家庭が重要

4月に「こども家庭庁」が発足した。少子化や児童虐待、いじめなど複数省庁にまたがっていた重要課題に一元的に取り組むことを目的としているが、第一の課題は少子化対策である。

大人の子育て力が低下し、児童虐待が増加する中、社会がその不足を補う必要があるのは確かだ。しかし第一義的に、子供の養育義務を負うのは親であり、子供に対し無条件に愛を注げるのも親である。そういう意味で子供たちを産み育てる家庭がまずしっかりしなければ、子供たちの福祉も望めない。