」=26日午後6時56分、北海道斜里町沖.jpg)
北海道・知床半島沖で26人を乗せた観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故から、きょうで1年が過ぎた。悲惨な事故の再発防止を誓う一日としたい。
会社は事業許可取り消し
この事故では20人の死亡が確認され、依然として6人が行方不明だ。第1管区海上保安本部(小樽市)と北海道警は、冬季に中断していた半島沿岸部での行方不明者捜索を再開した。一日も早い発見が望まれる。
事故発生後、運航会社のずさんな安全管理の実態が次々と明らかになった。運航会社の社長とカズワンの船長は事故当日、地元に強風・波浪注意報が出ていたことを把握しながら出航を決定。社長は、海が荒れれば引き返す「条件付き運航」で船を出したと説明しているが、関係者の多くは出航したことに疑問を抱いており、決定が妥当だったとは到底考えられない。
カズワンが航行していた「カシュニの滝」周辺海域を通るコースは、知床の世界自然遺産を巡るクルーズの定番だった。会社の利益が優先され、乗客の安全がないがしろにされたのであれば許されない。
さらに会社の事務所では、カズワンとの交信に必要な無線アンテナが壊れていた。陸上との連絡手段として国に申請していた船長の携帯電話は事故当時、通信エリア外にあり、救助要請は乗客の携帯電話から発信されるなど、安全対策が極めてお粗末だったことが分かっている。
海上運送法に基づく会社の安全管理規定では、船長が運航管理者に対し、決められた地点に達した時に通過時刻や天候、風速、波浪などについて連絡する必要がある。だが運航管理者の社長は事故当日、この作業を行っていなかった。運航管理者は航行中、事務所にいなければならないが、社長は病院に行っていたため事務所を離れていた。あまりにも無責任だと言わざるを得ない。会社の事業許可が取り消されたのも当然である。
事故について、国の運輸安全委員会は昨年12月、船の前方のハッチのふたが十分に閉まっていない状態で運航し、そこから海水が流入したとする報告書を公表。船底を仕切る壁に開いた穴から浸水が広がったと考えられ、壁を密閉していれば沈没を回避できたとしている。
事故3日前の中間検査では、国の検査を代行する「日本小型船舶検査機構」(JCI)が、当時の検査事務規定に従い、ハッチのふたに腐食や亀裂が無いと確認できたため、開閉試験を省略していた。国土交通省は規定を見直し、ハッチの開閉確認を必ず実施することとした。
不十分だった国の検査
一方、JCIが検査時、船を陸に揚げた上での船体確認や、主機関などの動作確認を省略する運用を行っていたことが事故後に発覚した。不十分な検査が大事故につながったとすれば国の責任も重い。
国交省は、2025年度以降に新造される小型旅客船などを対象に、甲板下の区画での浸水拡大を防ぐ「水密隔壁」の設置を義務付ける。23年度は不適格事業者排除のための拘禁刑導入を目指す。再発防止への取り組みを徹底する必要がある。



