【社説】日本学術会議 強い懸念残る改正法案見送り

政府は日本学術会議の会員選考の在り方を見直す法改正案について、今国会への提出を見送ることを決めた。学術会議は発足当初から日本共産党との関係が深く、軍事研究を認めないのも共産党の影響とみていい。会員選考の客観性や公正性を確保する法案の提出見送りで、引き続き共産党色の残ることが強く懸念される。

「開かれた協議の場」勧告

法案は会員選考について有識者が審議する第三者機関「選考諮問委員会」を新たに設けることなどが柱。これまでは、学術会議が推薦した会員候補を首相が任命してきたが、2020年10月に菅義偉首相(当時)が、候補のうち6人を任命しなかったことを機に、政府と学術会議が対立してきた。

学術会議側は、法案について「独立性が損なわれる」と反発し、いったん提出を見合わせ、学術界全体の体制を抜本的に見直すための「開かれた協議の場」を持つよう政府に求める勧告を出していた。勧告は日本学術会議法に基づいて実現を強く求める意思表示で、出すのは13年ぶり。政府が法案提出を見送ったのは、提出すれば対立が決定的となり、世論の理解も得られないと判断したからだ。

創設以来、学術会議は共産党系の会員の影響が強く、現在も共産党系の学者が会員候補に推薦されることが多い。しかし学術会議は内閣府の特別の機関の一つであり、年約10億円の国家予算で運営されている。会員は特別職国家公務員だ。公正な会員選考が求められるのは当然である。「独立性」を盾に、特定のイデオロギー色の強い体質を維持することは容認できない。

1949年1月に発足した学術会議は、50年4月と67年10月に軍事研究を行わないとの声明を発表。2017年3月には、この二つを継承するとの新たな声明を決定した。だが軍事研究否定は、日本の防衛力を強化する上で大きな支障が生じかねない。22年7月には、軍事と民生双方で活用できる「デュアルユース(両用)」の先端科学技術研究について、事実上容認する見解をまとめているものの、軍事研究についての立場に変更はないとしている。

日本学術会議法の前文には「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」するとの文言がある。中国やロシア、北朝鮮の脅威が増大する中、日本の平和を守るには抑止力の向上が欠かせないが、学術会議は防衛省の装備品開発に関する「安全保障技術研究推進制度」にも反対している。

一方、15年9月には中国科学技術協会と協力促進を図る覚書を交わしている。この協会は中国共産党中央書記処の管轄下にあり、協力は日本を脅かす中国の軍事力向上に利用される恐れが強い。学術会議は一体どこの国の機関なのか。

 民営化もやむを得ない

政府の最大の使命は、国民の生命と財産を守ることである。政府機関の学術会議がこれに逆行するような言動を繰り返しているのは嘆かわしい限りだ。

学術会議が公正な会員選考の在り方に反対し、これからも国益を損ない続けるのであれば、民営化もやむを得ない。