【社説】NATO北欧拡大 露の侵略に決然とした措置だ

ブリュッセルのNATO本部で、掲げられたフィンランド国旗=4月4日、(UPI)

北欧のフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟し、NATOは31カ国体制となった。ロシアがあからさまにウクライナを侵略して軍事的脅威を高めた結果であり、加盟申請から1年未満の素早さで加盟が実現したことは、欧米の加盟国がロシアの軍事力行使を許さず決然と対抗していく結束を示したと言える。

長年の中立政策を放棄

NATOのストルテンベルグ事務総長は「フィンランドを加盟によってさらに安全な国にして、加盟国の同盟をより強固にする」と述べ、フィンランドのニーニスト大統領は加盟により「地域の安定を強化する」と訴えた。申請中のスウェーデンの加盟実現も期待したい。

だが、ソ連崩壊から約30年の国際間の外交が失敗した問題もある。ポーランド、チェコ、ハンガリーに始まるNATO東方拡大がロシア側の不信感を高め、反米など民族感情が高まり、プーチン政権が独裁化するにつれて民主体制は影を潜めた。これを欧米諸国が批判するなど、相互不信は増幅した。

予防外交は機能しなかったと言えよう。2014年にロシアのクリミア半島併合が起き、昨年からは「特別軍事作戦」と称してウクライナへの本格的な侵攻を開始。明白な主権侵害で国際法に違反する侵略行為であることから、欧米など国際社会とロシアとの決裂は修復できないほどになった。

ただ、ウクライナ侵攻で核兵器使用の可能性を示唆しながら領土を切り取ることは、帝国主義が跋扈(ばっこ)した近代の時代に時計の針を逆戻りさせるような暴挙だ。時代錯誤であり、ウクライナの人々の生活基盤を根こそぎ破壊し尽くす焦土戦を展開しながら軍を進めるロシアに対して、隣接する民主主義国が安全保障上の活路を模索しない方がおかしい。

ウクライナはNATO加盟を目指しながらも同盟国がなく、NATO側も介入を否定した。この現実に、フィンランドやスウェーデンが旧ソ連時代から長く続いた中立政策を放棄した。冷戦時代にも起きなかったことで、ロシアは外交的信用の喪失を恥じるべきだ。

ロシアと1300㌔の国境を接するフィンランドは、第2次世界大戦勃発直後にソ連から侵攻を受け、領土の一部をソ連に奪われながらも国防を果たしている。しかし、核兵器の威嚇をプーチン大統領が繰り返したことにより、NATO加盟国の核の傘と集団自衛権を選ぶほかなかったのは理解できる。

プーチン氏はウクライナが31番目のNATO加盟国になるのを阻止しようと軍事侵攻を始めたが、逆効果になって、北欧地域の緩衝地帯がなくなり直(じか)に接することになった。

安保結束固め緊張打開を

ロシアの国益に反することは明らかだが、プーチン政権はウクライナへの軍事侵攻を「ナチズムとの戦い」「祖国防衛の義務」などと正当化するあまり、盲目的になっている。ロシアはベラルーシに戦術核を配備するなど対抗策に動いている。緊張の高まりは否めないが、安保上の結束を固めつつ外交的打開の機会を待ちたい。