参院は本会議で、国会欠席を続けて「議場での陳謝」の懲罰も拒否した政治家女子48党のガーシー(本名・東谷義和)参院議員を「除名」とする懲罰を正式決定した。ガーシー氏は昨年7月の参院選で初当選を果たした。選挙で示された民意は重いが、ガーシー氏に国会議員の重責を担う資格はなく、除名処分は仕方があるまい。
現憲法下では3例目
本会議では、憲法の規定に基づき出席議員の3分の2以上の賛成で除名を議決。尾辻秀久議長が宣告し、ガーシー氏は議員の身分を失った。国会議員の除名は72年ぶりで現憲法下で3例目。欠席に基づく除名は初めてとなる。
ガーシー氏は初当選以降、一度も登院しなかった。国会法は、議員が正当な理由なく召集日から7日以内に登院せず、議長が登院を促しても応じない場合、議長が「懲罰委員会に付す」と規定している。ガーシー氏は、昨年8月と10月から12月までの臨時国会、そして今年1月からの通常国会と3国会にわたって欠席を続けており、本来はもっと早く懲罰を科すべきだった。
ただ国会が迅速に対応できなかったのは、国民の負託を受けた国会議員の身分がそれだけ重いからだ。ガーシー氏は参院選の比例代表で28万票以上を得て当選した。この民意を軽んじることはできず、ガーシー氏への懲罰に関する議論が始まったのは通常国会からである。参院はまず「議場での陳謝」の懲罰を科し、ガーシー氏が拒否すれば除名とする二段構えの対応を取った。だが、この問題で国会の権威が揺らいだことは確かであり、こうした事態を招いたことは極めて遺憾だ。
ガーシー氏はこの間、海外に滞在し、帰国すれば「逮捕される恐れがある」と主張していた。警視庁は昨年12月、動画投稿サイトで複数の著名人らを中傷、脅迫した疑いがあるとして、ガーシー氏に任意の事情聴取を要請。今年1月には、暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)容疑などでガーシー氏の関係先など数カ所を家宅捜索した。
しかし、このような事情で国会欠席を正当化することはできない。そもそも帰国するつもりがないのであれば、参院選に立候補したのはあまりにも無責任だと言わざるを得ない。
ガーシー氏には歳費や期末手当など計約2000万円が支給されている。正当な理由がなく長期欠席する議員には、歳費を差し止めることも検討すべきではないか。
政女党の浜田聡参院議員は、除名の採決に先立ち、本会議で「(ガーシー氏に投票した)国民の声を否定することは許されない。多数派による不平等な措置だ」と処分を批判した。だが国会議員である以上は、自身の支持者だけでなく、国家と全ての国民のために国会で活動することが求められる。ガーシー氏の欠席は国民に対する裏切りにほかならず、「多数派の横暴」との批判は当たらない。
政治の信頼回復に尽力を
ガーシー氏が一定の支持を受けた背景には、既存の政治への不信がある。政治家は今回の事態を重く受け止め、信頼回復に尽力すべきだ。



