
不安の第1段ロケット打ち上げをクリアし安堵(あんど)もまさかの暗転――。関係者のみならず、打ち上げを見守ったファン全ての共通した思いであろう。
わが国の次期基幹ロケットH3の打ち上げ失敗は大変残念であり、日本の宇宙開発に大きな痛手だが、まずは確実な打ち上げへ原因の徹底した究明を急ぎ、信頼の回復に努めてほしい。
第2段エンジン着火せず
今回は、2月17日の初打ち上げが発射直前に中止となったロケット第1段の原因を克服しての打ち上げで、順調に発射台から宇宙に向け飛び立った。それは、開発が難航し約2年の遅れとなった新開発の液体燃料エンジン「LE-9」が正常に機能した証しでもあり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岡田匡史・H3プロジェクトマネジャーが安堵したのも肯(うなず)ける。
だが、それも束(つか)の間。第2段エンジンが着火しないという予期せぬトラブルに見舞われ、結局、打ち上げから14分後の午前10時51分に指令破壊信号が出され、機体は搭載した先進光学衛星「だいち3号」と共にフィリピン東方沖に落下した。
第2段エンジンは、打ち上げ成功率が97・8%という国際水準以上のH2Aロケットに使われているものとほぼ同じで、実績は豊富。地上での燃焼試験でも不具合はなかったという。
それだけに、今回のトラブルには首をひねる専門家も少なくなく、原因究明にはかなりの時間を要する恐れがある。JAXAでは、電気系統などの異常が想定されるとしているが、予断なく飛行中のデータなどを詳しく分析し、徹底した解明を進めていってほしい。
H3は約30年ぶりの新規開発ロケットで、新型エンジンで打ち上げ能力を高め、かつコストを低減させて、世界の商業衛星打ち上げ市場で競争力を高めるのが狙い。自動車など他産業の優れた民生部品を積極的に採用し、打ち上げコストを約50億円とH2Aの半額に下げ、今後20年を見据え毎年6機程度を安定的に打ち上げたいとしている。
新型エンジンの開発難航で遅れはしたが、当面の打ち上げ計画では準天頂衛星や新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」、火星衛星探査計画「MMX」、情報収集衛星などのほか、米月探査「アルテミス」計画でも相応の役割が期待されている。
今回の失敗により、昨年10月の固体燃料ロケット「イプシロン」6号機と合わせ、液体燃料と固体燃料の2系統の基幹ロケットがトラブルを抱える非常事態となり、計画がさらに遅れることが必至。非常に残念で、日本の宇宙開発、宇宙ビジネスに大きな痛手である。
とはいえ、今肝心なのはH2Aのように着実に打ち上げられるようになることである。徹底した原因究明が待たれる所以(ゆえん)であり、関係者は萎縮せずに取り組んでほしい。
問われる宇宙への本気度
相次ぐJAXAの打ち上げ失敗は偶然なのか。また、米国や中国などと比べて圧倒的に少ない予算でのやり繰りが影響してはいないのか。国の安全保障にも深く関わる状況の中、国の宇宙開発への本気度が問われていると言える。



