【社説】北ミサイル 米本土攻撃の脅しを許すな

18日午後、平壌国際空港で行われた大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射訓練(朝鮮通信・時事)

北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる1発を平壌付近から発射した。ミサイルは通常よりも高い角度で打ち上げて飛距離を抑える「ロフテッド軌道」で飛翔した後、北海道・渡島(おしま)大島の西方約200㌔の日本海に落下。落下定点は、日本の排他的経済水域(EEZ)内と推定される。国連安全保障理事会の決議に違反し、断じて許されぬ暴挙である。

米韓軍事演習に強く反発

北朝鮮による弾道ミサイルの発射は今年2回目。ICBM級ミサイルは昨年11月以来、3カ月ぶりだ。北朝鮮は発射したミサイルを「火星15」と発表した。射程は1万㌔を超え、米本土の攻撃が可能とされる。

米韓両国は今月、北朝鮮の核兵器使用を想定した机上演習を予定。3月にも大規模な合同軍事演習「フリーダムシールド」の実施を計画している。これに対し、北朝鮮外務省は「実行するなら、今までに見たこともない持続的で前例のない強力な対応に直面する」との談話を発表していた。今回のミサイル発射は、米本土への攻撃力を誇示することで米国を威嚇する狙いがあるとみられる。

ミサイル発射を受け、林芳正外相はドイツで開催中の先進7カ国(G7)外相会合で北朝鮮を非難。日米韓3カ国の外相会談では、北朝鮮の行動が国際社会への明白かつ深刻な挑戦であるとの認識を共有し、3カ国が緊密に連携して対応する方針が改めて確認された。

北朝鮮は昨年、37回にわたって70発以上の弾道ミサイルを発射し、過去に例を見ない激しい威嚇行動に出た。4月には金正恩朝鮮労働党総書記が核兵器の先制使用に言及。12月には韓国を意識し、戦術核の大量生産を翌年の国防力強化の方針に掲げた。今月の朝鮮人民軍創建75周年記念の軍事パレードには、固体燃料型の新型ICBMと共に「火星17」とみられるミサイルをこれまでで最大の11基も登場させ、米本土攻撃態勢が整ったことを誇示している。

こうした動きに対し韓国の尹錫悦政権は、文在寅前政権の融和路線を改め、強い態度で北朝鮮に臨んでおり、韓国では核武装や米国との核共有が議論されている。オースティン米国防長官も、米韓国防相会談で拡大抑止の強化を約している。だが、早期の対米交渉再開を望む北朝鮮が7回目の核実験に踏み切るなど今後軍事活動をさらに活発化させる可能性がある。

日本は米韓両国と共に国際社会に広く訴え掛け、北朝鮮の核・ミサイル開発や軍事的な威嚇行動の阻止に全力を挙げるべきだ。5月開催のG7首脳会議(サミット)でも、議長国としてロシアのウクライナ侵略や中国の覇権的行動に加え、北朝鮮問題を議題に掲げる必要がある。

日韓の関係改善早急に

また北朝鮮の脅威に対処するには、日米韓の協力体制強化が何よりも重要だ。しかし日韓の間では、元徴用工問題や2018年の韓国海軍艦艇による自衛隊機へのレーダー照射問題など解決を要する案件が横たわっている。まずは日本が納得できる解決策を韓国側が示し、両国が足並みを揃(そろ)えて早急な関係改善実現に取り組まねばならない。