永岡桂子文部科学相は宗教法人法に基づき、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に3回目の質問書送付を行った。
質問権の行使は「解散命令請求ありき」の結論先行であってはならない。法の趣旨に則った調査を求めたい。
教団職員の給与手当も
今回の質問事項は、組織運営や財産・収支、献金、海外への送金など約80項目に及ぶ。2月7日までの回答を求めている。教団側は「1回、2回目と同様、期限内に適切な回答に努めさせていただきます」とコメントしている。
宗教法人法には解散命令の事由として「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」がある。それが「組織性、悪質性、継続性」を持つ疑いがあるとして、文科相の諮問機関・宗教法人審議会の答申を経て質問権行使が行われた。
質問権の創設は、地下鉄サリン事件など無差別テロを行ったオウム真理教の事件がきっかけであった。最も憎むべき犯罪であるテロを行った教団と、安倍晋三元首相の暗殺事件でテロの標的とされていたことが分かった旧統一教会では、大きな違いがある。
岸田文雄首相も旧統一教会の問題について、当初は「過去に解散を命令した事例と比較して十分に解散事由と認められるものではない」との見解を示していた。また、解散命令請求の要件に「民法の不法行為は入らない」とも答弁していた。ところが、一夜にして「入り得る」と法解釈を変更した。前代未聞の朝令暮改である。
本来、個人の救い、ひいては公共の福祉をもたらすために存在する宗教団体が、公共の福祉に著しく反する行為を組織的に行うことなどもってのほかである。しかし一方で、宗教団体の解散命令を請求するということは、信教の自由を著しく抑圧することになりかねない。信教、内心の自由は基本的人権の核心部分であり、民主社会の大前提である。
宗教法人法は質問権行使に関して「報告を求め、又は当該職員に質問させる場合には、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないよう特に留意しなければならない」としている。政府がどれほど信教の自由を重んじているか大いに疑問である。
質問権行使は昨年11月22日に1回目、12月14日に2回目が行われた。今回の質問項目には、教団職員の給与手当・退職金なども含まれているが、どれほどの必然性があるのか。
教団の解散命令を請求するかどうかは、信教の自由と公共の福祉の観点から、その全体像を検証して判断されるべきである。その教団がこれまで社会貢献をしてきたとすれば、その点も公平に見る必要があるだろう。また教団自身が反省し、自己改革が進められるかどうかも見ていくことが求められる。
宗教を衰退させるな
特定教団に対する恣意(しい)的な質問権行使は決してあってはならない。
悪しき前例をつくって信教の自由を侵害し、日本の宗教を混乱させ衰退させるべきではない。



