【社説】非常任理事国 安保理の改革実現に尽力を

日本が国連安全保障理事会の非常任理事国入りを果たした。

安保理は、ロシアによるウクライナ侵略や北朝鮮のミサイル問題を巡って米英仏と中露の対立が深刻化し、機能不全が指摘されている。日本は非常任理事国として安保理の改革実現に尽力する必要がある。

日本は史上最多の12回目

日本の安保理入りは2016~17年以来で、史上最多の12回目となる。任期は24年末までの2年間で、今月は議長国も務める。石兼公博国連大使は「安保理の声を一つにしたい」と強調した。

安保理は昨年2月、ウクライナ侵略を非難し、即時撤退を求める米国主導の決議案を採決に付したが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し否決された。5月には、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受け、対北制裁を強化する米国主導の決議案を採決。だが、ロシアとやはり常任理事国の中国による拒否権行使で否決された。国際法違反の侵略や安保理決議に反する挑発行為に対し、国連は手をこまねくばかりだ。

安保理の機能不全は今に始まったことではない。国連は、国際連盟が第2次世界大戦を防げなかったことを反省し、連合国を中心に1945年に設立された。しかし連合国の一員とは言え、共産党一党独裁体制の旧ソ連を安保理常任理事国としたのは失敗だった。71年に中華民国(台湾)を国連から追放し、ソ連と同じ共産党独裁の中華人民共和国(中国)を常任理事国としたことも機能不全の要因だ。

国連が世界平和を守るには、自由、民主主義、法の支配、人権といった普遍的価値を基盤とすることが欠かせない。この意味で、対外的には覇権主義的な動きを強め、国内では国民の人権を抑圧する中国と、ソ連の後継国家でウクライナ侵略を続けるロシアに安保理常任理事国の資格がないことは明白だ。日本は安保理の改革実現に向け全力を挙げるべきである。

もちろん、改革は簡単ではない。安保理の構成を変えるには国連憲章の改正が必要だが、改正には全常任理事国を含む加盟国の3分の2の同意が必要だ。

改革を巡って日本はドイツ、インド、ブラジルとつくる「G4」の枠組みで共闘してきた。2005年には、常任・非常任理事国を拡大するなどの「G4決議案」を提出したが廃案となった。以降も改革を掲げてはいるが、進展する気配はない。

ただウクライナ危機以降、多くの加盟国が改革の必要性を感じていることは確かだ。国連総会は昨年4月、安保理で拒否権を行使した常任理事国に説明責任を負わせる決議を採択した。拒否権乱用に歯止めを掛ける狙いだ。12月には、常任理事国である英国のクレバリー外相が、常任理事国を拡大し、日本を加えることを支持すると述べた。

旧敵国条項の削除を

安保理改革と共に忘れてならないのは、連合国の敵国であった日本などへの自由な武力行使を容認する国連憲章の旧敵国条項の削除である。国連は民主主義国家の日本を敵視するのでなく、自由を認めず、人権や法の支配を踏みにじる国家の民主化と国際協調を主導すべきだ。