2023年度予算案が閣議決定された。一般会計総額は114兆3812億円と11年連続で過去最大を更新。防衛力の抜本的強化や脱炭素、少子化対策などに重点配分したためである。
税収は69・4兆円と過去最高を見込むが、それでも歳入は足りず、35・6兆円の新規国債を発行する。他の歳出項目で削減に励むとともに、税収増へ一段の経済力強化が欠かせない。
安保環境が大きく変化
予算案で歳出が増えた大きな要因は、防衛費の大幅な強化である。22年度比26%増の約6・8兆円に急増し、24年度以降の財源となる「防衛力強化資金」への繰り入れを含めると約10・2兆円になる。先に改定した国家安全保障戦略で決めた「反撃能力」保有のため、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の購入費用も計上した。
ウクライナ危機を契機に安全保障環境が大きく変化し、中国は相変わらず軍事費の拡大を続ける。厳しい安全保障環境の下では当然の対応である。
一番の歳出項目は、全体の3割超を占める社会保障費で1・7%増の36・8兆円と過去最高を更新。高齢化の進展で医療費の増加傾向に歯止めは掛からないが、それでも伸びを4100億円程度に抑え、当初見込みより1500億円縮減。少子化対策では出産一時金を42万円から50万円に引き上げた。
2番目に大きい国債費は、3・7%増の25・2兆円である。23年度も35・6兆円と予算の約3分の1を新規国債発行で賄うため、23年度末の国債発行残高は1068兆円に拡大する見込みだが、日銀が大規模緩和修正に舵(かじ)を切る中、金利水準が上昇すれば国債利払い費がさらに増える恐れもある。
それだけに、重点項目以外の歳出項目では極力削減に努めるべきである。例えば、物価高や新型コロナウイルスなどに対応する4兆円の予備費。一時1㌦=151円を付けた過度な円安からは修正が進み、最近では130円台前半で落ち着きを見せている。新型コロナも感染症法上の位置付けについて5類への引き下げ議論も始まった。これまでの補正を含めた予算措置では使い残しも出た。23年度予算案でもこれほどの額が必要なのか検討が求められよう。
他の歳出項目でも効率の悪いものがないか十分に精査し、いざというときの対応に備えられる柔軟さを確保したい。
最も大事なのは、税収増に結び付く経済力の強化である。23年度予算案で成長の牽引(けんいん)役として期待されるのは脱炭素社会の実現に向けた「グリーントランスフォーメーション(GX)」の推進で、政府は新たな国債「GX経済移行債」(仮称)を23年度には約1・6兆円発行し、調達した資金で民間の脱炭素投資を後押しする。水素による製鉄手法の実証実験や原発の建て替え、次世代革新炉の開発など時間を要する事業だけに地道に推進したい。
増税はできるだけ回避を
ただ、当面は即効性が期待しにくいのも確か。過去最高を見込む税収を確保するためにも、経済を傷め、企業の賃上げにも水を差す増税はできるだけ避けるべきである。



