【社説】金融緩和修正 もっと早くできなかったか

日銀がようやく大規模金融緩和の修正に踏み切った。大規模緩和の継続は、インフレ抑制のため欧米が利上げに動く中、内外金利差の拡大で異常な円安が進み、記録的な物価高の大きな要因になっていた。

今回の修正は評価するが、もっと早くに修正できなかったか悔やまれる。

長期金利上限0・5%に

日銀は20日の金融政策決定会合で、現行の大規模緩和策を一部修正し、長期金利の上昇を認める上限を従来の0・25%から0・5%に引き上げた。

事実上の利上げと同じ効果を持つため、当日の金融市場ではサプライズ感を持って受け止められ、債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債流通利回りが一時0・460%と、2015年7月以来7年半ぶりの水準に上昇。東京外為市場の円相場は1㌦=132円台半ばに急騰し、日経平均株価は一時800円超下落した。

円相場は米国の利上げ幅の縮小などで、150円台という32年ぶりの円安から円高方向に向かい、最近では137円を前後する水準で推移。今回の修正により円安修正も進み、23日は132円台となっている(それでも年初の水準から比べれは15円以上の円安である)。

日銀の黒田東彦総裁は、今回の修正は「利上げではない」と述べた。確かに政策金利の引き上げではなく、長期金利変動幅の拡大という形だが、それでも結果として円安是正の効果を上げている。逆に言えば、これまでの長期金利が異常に低かったために円安が進み、国内で不必要に物価が上がっていたということである。

利上げでない微調整の大規模緩和修正であれば、もっと以前に実施できたはずである。

本紙は早くから社説で、結果として日米金利差拡大を容認し円安を招いてきた大規模緩和の修正を求めてきた。円相場が130円台に下落した後の5月1日付、140円台になってからの9月13日付社説である。

もっと早めに大規模緩和が修正されていれば、食品の値上げや政府の物価高対策、物価高倒産もより少なくて済んだであろう。日銀には猛省を促したい。

食品の値上げは、帝国データバンクによると、来年も1~4月に7000品目以上予定されている。だが、今回の大規模緩和修正により日米金利差縮小が意識されて現在の円安修正に変化がなければ、原油や小麦など輸入品の価格上昇を通じた物価高は落ち着き、上昇ペースが和らぐ可能性が低くない。

円安修正傾向の維持を

物価はまだ騰勢を強めており、11月の消費者物価は前年同月比3・7%上昇と約41年ぶりの高い伸びになった。同月の企業物価も9・3%上昇して8カ月連続で過去最高を更新しており、最終製品への価格転嫁がさらに進めば消費者物価は一段と上がる懸念がある。現在の円安修正傾向を何とか維持したい。

住宅ローン金利は年明け以降、一部で引き上げが見込まれ、企業が資金調達する際の金利も中長期的に上昇する可能性がある。国の国債利払い費などにも影響する長期金利の動向を引き続き注視していきたい。