【社説】米ウ首脳会談 露の侵攻跳ね返す決意示した

21日、ホワイトハウスで記者会見するバイデン米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領(UPI)

ロシアから軍事侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領が米国を直接訪問し、バイデン大統領と会談したほか連邦議会で演説する中で「絶対的な勝利を勝ち取る」との決意を表明した。事実上の侵略戦争を耐えて約10カ月たつが、米国はさらなる支援の継続を約束した。国際社会が足並みを揃(そろ)えてロシアに野望を断念させる粘り強い支援と働き掛けが重要だ。

ゼレンスキー氏が訪米

ゼレンスキー氏が電撃的に訪米し、国際舞台の真ん中でロシアの暴虐な力による国境線の変更を許さない訴えを発したことは一つの朗報だ。戦時下のウクライナから侵攻後初となる外遊を可能とするまで抵抗を果たした証しでもあるからだ。

ウクライナ侵攻直後に首都キーウを脅かしていたロシアは、ゼレンスキー氏逃亡の偽情報を流し政権転覆を謀った。しかし、同氏自ら首都を離れずにいる動画を自身で撮影し、国の領土と国民の命を死守する強い決意を示した。戦時政権の指導者として国民に戦うことを鼓舞し、非常事態宣言下でカーキ色の服を着用し続け、訪米時もその姿を変えていない。

バイデン氏は18億5000万㌦(約2400億円)の追加軍事支援を発表したが、防空態勢がままならずインフラ攻撃にさらされ、冬に電力供給を各地で断たれているウクライナにとって地対空ミサイル「パトリオット」1基は小さな一歩にすぎない。旧ソ連時代からの防空システムよりも高性能とはいえ、追って配備の数を広げる必要があるだろう。

ロシアは米ウクライナ首脳会談に先立ちメドベージェフ前大統領を中国に送り、習近平国家主席との会談で中露関係をアピールした。プーチン大統領は国防省の幹部らを前に新型の大陸間弾道ミサイル「サルマト」の実戦配備を発表するなど威嚇を強めている。

だが、決定的にウクライナより劣っていることは、国民の支持がなく、若者は動員を忌諱(きき)して国外に脱出していることだ。強力な制裁によって経済が悪化し、「戦争」の言葉を禁じて国民に侵略を隠そうとしても部分動員発令でウクライナとの戦争、それも苦戦していることが知られてきている。

ウクライナは、北部、東部、南部の3方向から囲まれるように露軍の侵攻を受け、絶体絶命の窮地に立たされていた。しかし、演習と偽って投入された露軍兵士の士気は低く、遠隔攻撃による焦土戦で占領した地域も、弾薬不足になりウクライナ軍が反転攻勢を始めると撤退を余儀なくされている。

一方で、穀物や天然ガス・原油などの供給が滞り、世界的な物価高騰に直面し、長期化する戦争にウクライナ支援疲れの声も浮上している。だが、ウクライナをクリミア半島支配以来浸食しているのはロシアであり、本末転倒と言えよう。

支援継続要請に応えよ

あからさまに国際法を踏みにじる主権侵害に世界は憤慨し、対露制裁を強化した。同時に、支援継続を求めるゼレンスキー氏の呼び掛けに応えなければ、より以上の理不尽な現状変更が起きかねない。