【社説】辺野古移設 県は法廷闘争やめ協力を

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、国土交通相が県による埋め立て承認撤回を取り消す裁決をしたのは違法として、県が裁決の取り消しを求めた訴訟で、最高裁は県の上告を棄却する判決を言い渡して県の敗訴が確定した。

県は移設関連訴訟で敗訴を繰り返している。玉城デニー知事は不毛な法廷闘争をやめ、移設に協力すべきだ。

関連訴訟で敗訴繰り返す

県は2018年、軟弱地盤が見つかったことなどから埋め立て承認を撤回。沖縄防衛局の不服審査請求を受け、国交相が19年、撤回を取り消す裁決をした。最高裁は、国の裁決を不服とした県の訴訟提起を認めれば、防衛局が不安定な状態に置かれ、迅速な紛争解決が困難な事態が生じることになると指摘。「県が訴訟によって裁決の適法性を争うことはできない」とした。

辺野古移設に反対する県は、移設を阻止するために故翁長雄志前知事の時代から法廷闘争を展開してきた。県が国を相手取った訴訟は10件以上に上る。しかし県は敗訴を繰り返しており、司法判断は移設を後押しする形となっている。

辺野古移設は普天間の危険性除去と抑止力維持のための唯一の解決策だ。日本を守ることは当然、沖縄を守ることにもつながる。移設への反対は平和と安全を軽んじることだと批判されても仕方がない。

中国による台湾侵攻が現実味を帯びる中、在日米軍の抑止力維持は死活的重要性を持つ。台湾有事は日本有事であり、台湾が攻撃されれば沖縄の先島諸島も巻き込まれる恐れがある。一方、普天間は住宅密集地に位置しており、住民の安全を確保するには辺野古への移設が不可欠である。

沖縄は今年、県知事選のほか多くの市町村で首長選が行われた選挙イヤーだった。県知事選では、辺野古移設反対で結集する「オール沖縄」の支援を受けた玉城氏が再選を果たしたが、普天間のある宜野湾市長選や移設先の名護市長選など七つの市長選でオール沖縄は全敗。那覇市長選では、オール沖縄の支援を受けてきた現職が自民、公明推薦の新人を支援するなど、ほころびも生じている。

選挙結果を見ても、沖縄が移設反対一色ではないことが分かる。辺野古移設は沖縄北部の経済活性化にもつながる。移設反対に固執する玉城氏が、移設を容認する県民の声にどこまで耳を傾けてきたのか疑問だ。

また玉城氏は、11月に行われた日米統合演習「キーン・ソード」で、自衛隊車両が日本最西端の沖縄・与那国島の公道を走ったことにも「県民にさまざまな不安を生じさせた」などと批判した。これに対し、与那国町長は「抵抗感は全くない。政府の危機感の表れだ」と述べている。与那国島は台湾と約110㌔しか離れていない。

政府は着実に工事進めよ

県民にとっては、自衛隊が公道を使うことよりも、中国の脅威に対する不安の方がはるかに大きいのではないか。

辺野古移設の重要性は高まっている。政府は着実に工事を進める必要がある。