新型コロナウイルス感染「第7波」や、円安などによる物価高の影響で個人消費が鈍化し、輸入の拡大が成長の足を引っ張った――2022年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が示す日本経済の姿である。
岸田文雄政権は先月下旬に電気・ガス料金の負担軽減策を柱とした総合経済対策を決定したが、消費の下支えには不十分である。物価高対策に重点配分した組み替えを行うべきである。
4四半期ぶりのマイナス
速報値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0・3%減、年率では1・2%減と4四半期ぶりのマイナス成長となった。
直接の要因は、輸入の伸びが5・2%増と輸出の1・9%増を大きく上回り、輸出から輸入を差し引いた外需がGDPを0・7%押し下げたからである。
もっとも、輸入が大きく伸びたことは、資源価格の高止まりや円安の影響もあるが、内需が底堅いことを示しており、必ずしも悲観すべきことではない。数字ほど内容は悪くないということである。
ただ気になるのは、内需に力強さが欠けてきていることである。GDPの5割強を占める個人消費は、前4~6月期の1・2%増から0・3%増と減速。設備投資も1・5%増と前期(2・4%増)から鈍化した。
個人消費を減速させたのは、コロナ第7波と歴史的円安による物価高である。今年は3年ぶりに行動制限のない夏休みだったが、第7波による外出自粛が響いた。また、円安の進行に伴い生活必需品の値上げが相次いで消費者の節約志向が高まり、それが重しとなったのである。
特に憂慮されるのは、10月以降も物価高が進行し、やむ状況にないことである。10月は食料品で約7000品目が値上げされるという記録的な値上げの秋を迎え、年内には2万品目を超えるという。電気・ガス料金などを含め値上げによる家計負担増は年間で7万~8万円との試算もある。
政府が決定した総合経済対策での電気・ガス料金の負担軽減策は、ガソリン補助金の延長と合わせ、来年1月から9月にかけて総額6兆円を投じて平均的な家庭の負担を4万5000円ほど減らすことを目指すが、これまでの上昇分は含まれない。
しかも、9月に決まった電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援の5万円給付は住民税非課税世帯が対象であり、同世帯以外でも家計に打撃を受けている世帯は少なくない。こうした世帯へ支援が行き渡るよう、物価高対策を拡充すべきである。総合経済対策では緊急でないものも目立つから、それらの予算を物価高対策に回せばいい。
自律的回復の基盤整えよ
円相場は米国の大幅利上げ観測が後退したことで、今週に入り1㌦=139円台に戻すなど、円安に一服感が出ているが、基調の転換とみるのは尚早というのが大方の見方である。
コロナ「第8波」が拡大傾向を見せ、実質賃金は6カ月連続のマイナスである。世界的な景気後退懸念も出ている。日本経済を取り巻く環境は容易でなく、まずは消費を下支えし、賃上げを誘導して自律的な回復の基盤を整えるべきである。



