【社説】露反LGBT法 懸念される人権抑圧正当化

ロシアでは、同性愛など「非伝統的な性関係」についての情報の流布を大幅に制限する法律が改正される見通しだ。性的少数者(LGBT)に関する報道や映画がほぼ全面的に禁止される可能性がある。

子供や若者の健全育成のために過激な性情報から守る措置を講じることは必要だが、過度な罰則がLGBT差別を助長することが懸念される。

同性愛情報の提供禁止

法案によると、テレビやラジオなど無料の場合は全面的に禁じられ、有料でも対象者の年齢確認が義務付けられる。罰金は個人で最高40万ルーブル、法人の場合は500万ルーブルだが、今後の議会での審議でさらに厳しい罰則となる可能性もある。

ロシアでは既に2013年6月、同性愛に関する情報を未成年者に提供することを禁じる法律が成立している。今回の法案は対象をすべての年齢に広げるものだ。

LGBTに関しては、共産党一党独裁体制の中国も厳しい姿勢を示している。中国では1997年まで同性愛を法律で禁じていた。現在も、同性愛を「非正常の性関係」としてインターネットの番組などで表現することを禁止している。

17年のロシア革命直後のソ連では、共産主義に基づく性の自由化と家族解体政策が進み、同性愛への罰則も撤廃された。だが離婚率が4割近くまで上昇し、出生率は急減。少年による非行が増え、治安が悪化するなどの混乱を招いた。この結果、社会主義体制の安定のため、性道徳と伝統的家庭を立て直す政策に転換した経緯がある。

社会の秩序を乱さないためには、性道徳を重んじ、一夫一婦制の伝統的家族制度を守る政策が必要だ。ただ中露は、強権体制維持のために家庭重視の政策を進めている面がある。ロシア政府のLGBTに対する偏見は強く、”反LGBT法”を人権抑圧の正当化に利用することが懸念される。

一方、民主主義国では過激なLGBT運動が大きな混乱をもたらしている。米国ではLGBTの権利が絶対視され、体は男性で心は女性という「トランスジェンダー女性」が、女子トイレなど女性専用の施設に入ることを容認している。このため、女性が性的暴行を受ける事件も発生するなど安全が脅かされる事態となっている。

日本では2021年3月に札幌地裁で、同性婚が認められないことは憲法14条が定めた「法の下の平等」に照らし違憲とする判決が下った。また、同性婚制度の代替として「同性パートナーシップ制度」を導入する自治体が増えるなど伝統的家族制度を脅かす動きが進んでいる。

「家族条項」明記の改憲を

民主主義国では自由や人権が尊重されるため、LGBTの権利擁護や同性婚制度を求める声も高まっている。LGBTの人権を守ることは大切だが、それが性の自由化や家族解体につながれば社会秩序を大きく乱すことになる。

自由と民主主義の根幹には伝統的家族制度があるべきだ。日本では同性婚の法制化防止のためにも「家族条項」を明記する憲法改正が求められる。