ロシアによるウクライナ侵略が2月末以来続いている。西側諸国の武器支援などが奏功し、ロシアが劣勢に陥る中、ウクライナ復興に向けた動きが盛んになりつつある。
ウクライナではロシアによって多くのインフラが破壊されている。西側諸国が結束して復興に当たる必要がある。
ベルリンで国際会議開催
ウクライナ復興に関する国際会議がベルリンで開かれ、復興費用を拠出する国際的な枠組みづくりに向けて各国首脳や国際金融機関トップが具体策を協議した。先進7カ国(G7)の議長国ドイツのショルツ首相は「21世紀の新たなマーシャル・プラン」が必要だと強調。第2次大戦後の米国による欧州復興支援になぞらえ、巨額の援助への協力を訴えた。
ウクライナでは、南部クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋で先月起きた爆発以降、ロシアが「報復」としてインフラを標的に多数のミサイルを発射している。苦戦に陥るロシアが、なりふり構わず攻撃を強めているのだろうが、ウクライナにこれ以上の犠牲を強いることは許されない。西側諸国はミサイル防衛システムの供与など、武器支援を強化すべきだ。
国際会議では、ウクライナのゼレンスキー大統領がビデオ声明で「ミサイルとイラン製の攻撃ドローンがエネルギー分野だけでも3分の1以上(の施設)を破壊した」と訴えた。冬の寒さで国民生活が一段と厳しくなる事態も想定され、復興支援は急を要する。
ウクライナは復興計画に7500億㌦(約110兆円)が必要だとしている。すぐに全額を拠出するのは難しいとしても、最低でも冬を乗り切るだけの支援は進めなければならない。
岸田文雄首相はビデオ声明で「日本独自の知見と強みを生かした支援を行っていく」と表明。避難民の保護など従来の取り組みに加え、暖房整備や防寒具の供与、東日本大震災の経験を踏まえたがれきの再利用技術の共有などの支援を一層積極的に行う考えを示した。復興に大きく貢献してもらいたい。
ロシアの侵略はウクライナだけでなく、世界全体に大きな損害を与えようとしている。ロシアは黒海の港経由でウクライナ産穀物の輸出を再開するウクライナ、トルコ、国連との4者合意の履行を無期限に停止すると発表した。
その理由として、クリミア半島セバストポリの港湾一帯でロシア艦艇がウクライナのドローンによる攻撃を受けたことを挙げている。しかし、ウクライナ側はロシアの「自作自演」としている。
穀物の輸出停滞は世界的な食料危機を招きかねない。ロシアが国際社会を揺さぶるために口実をでっち上げているのだとすれば、あまりにも身勝手な態度である。
西側は食料危機克服を
G7は6月の首脳会議で、食料問題解決のために約50億㌦(約7200億円)を拠出すると決定した。
ウクライナ復興はもちろん、食料危機克服のためにも、G7をはじめとする西側諸国の連携強化が求められる。



