【社説】山際担当相更迭 混乱招いた首相の責任は重い

山際大志郎経済再生担当相が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が相次いで判明した問題の責任を取って辞表を提出した。事実上の更迭であり、岸田文雄首相は「任命責任を感じる」と述べた。

しかし、同問題への対処を誤り国会に混乱を招いた首相の政権運営にはもっと重たい責任がある。その認識を持って打開策を講じなければ、政権はますます深みにはまり、窮地に陥ることになろう。

後手後手の対応に

山際氏は岸田政権発足と同時に同担当相に就任し、8月の内閣改造でも留任した。岸田首相の看板政策である「新しい資本主義」や新型コロナウイルスへの対応を任せられるなど政権の重要な柱となってきた。首相とすれば何とか野党の追及を乗り越えられればと思っていたに違いない。

だが、同教団関連団体のイベント出席などが相次いで発覚し、マスコミなどが新たな接点を指摘するたびに本人が認めるといった後手後手の対応が繰り返され、「国会審議に支障を来すことは本意でない」との理由で辞任を申し出た形だ。山際氏に求められていたのは、自らの責任で行ってきた政治活動を堂々と情報公開し、積極的に説明責任を果たすことだった。

しかし、もっと問われるべきは、同問題への首相の対処法である。首相は8月の段階では、閣僚ら政務三役と同教団との関係について「個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はない」とする答弁書を閣議決定した。だがその後、政権支持率の急落に悩む首相は、教団およびその関連団体との関係断絶を宣言するに至った。

これは憲法が保障する「信教の自由」や信徒らの基本的人権を脅かす問題であるにとどまらない。野党が関係議員に対して非難を浴びせ追及できるお墨付きを与えてしまったことを意味するからである。全自民党議員に対して関係を調査し、半数近くが接点を持った結果が公表されるとマスコミや野党の追及はさらに厳しくなったのである。

調子づいた野党は、予算委員会で公然と憲法違反の質問を行うようになった。立憲民主党の議員(弁護士)は山際氏に「旧統一教会の信者か」と尋ね、踏み絵を迫った。これは信教の自由、内心の自由を保障する憲法に抵触しているのは明らかだ。

日本維新の会の議員(牧師)は「旧統一教会は伝統的なキリスト教とは無関係であり、略称で教会と呼ぶと非常に迷惑だ」などと述べ、中世の異端審問と同様の前提で質問を続けた。こうした議員をたしなめる者のいない今の国会は異常である。

野党は今後、辞任ドミノを狙って攻勢を強めよう。首相は同教団の解散請求に向けた「質問権」の行使で問題解決に向けた姿勢をアピールする意向とみられるが、混乱は拡大する可能性があり収拾できるか予断は許されない。

重要案件に時間割け

国会は新たな国家安全保障戦略の策定や総合経済対策の裏付けとなる令和4年度第2次補正予算案の審議、為替対策、新型コロナ対策などの重要案件にもっと審議時間を割くべきだ。