
5年に一度開催される中国共産党大会が閉幕し、今後5年間の新体制が決まった。
最高意思決定機関の共産党政治局常務委員会のメンバーは、習近平総書記(国家主席)側近で固められ「習氏一強」体制の構築が際立った布陣となった。
集団指導体制が形骸化
共産主義青年団(共青団)のホープだった胡春華氏の常務委員入りはなく、「ポスト習」となる50代前半の若手登用もなかった。習氏は2027年以降の4期目続投も視野に入れているものとみられる。
文化大革命で疲弊した中国を改革開放路線で修復させ国力増強への道筋を付けた鄧小平は、政治制度として独裁政治を縛る集団指導体制を敷いた。だが、今回の共産党大会で明らかになったことは、トップの意向で制度を使い分ける姿勢だ。
世代交代を進めるルールだった68歳定年制にしても、きちっとした線引きはなかった。これでは集団指導体制は有名無実と化す。
これまでも「習氏と他の6人の政治局常務委員の関係は、皇帝と家臣のそれだ」といった風評が流れていた。党の集団指導体制の形骸化が進むことで懸念されるのは、チェック機能低下に伴うバランス感覚の欠落だ。ブレーキの利かない暴走車ほど危険なものはない。
習氏が目指すのは、建国の父である毛沢東型統治だとされる。だが、党主席として絶対的権力を握った毛は、文革によって国家を疲弊させ中国全土に混乱を引き起こした。強権統治は建国初期の開発独裁として有効な面もあるが、近代化を果たし社会が複雑になると、直線的統治は有機的につながっている社会の機能を損ない活力をそぎ落とす負の面が多くなる。
「習氏一強」体制の構築で懸念されるのも、こうした独裁政治の弊害だ。習氏の権威付けはこれまで着々と進んできた経緯がある。
共産党は16年、習氏を別格の指導者である党の「核心」と位置付け、5年前の党大会では習氏の名前を冠した思想が党規約に盛り込まれた。さらに18年3月には、国家主席の任期制限を撤廃することで、3期目続投の布石を打った。
習氏3期目は、集団指導体制から振り子は逆に大きく振り戻され、1人のリーダーに権力が集中する過去の毛時代に逆行する趨勢にある。ただ今回の党規約改正では、党主席制導入や「習近平思想」の明記などはなく、習氏の地位が毛と同格というところまでは至っていない。
だからこそ、習氏が求心力を高めるための実績を求めて冒険に打って出るリスクも存在する。4年前、国家主席の任期制限を撤廃しようとした時、習氏は「台湾統一には時間がかかる」と言って長老たちを説得したとされる。
侵攻への警戒強めよ
習氏3期目最大の懸念は、台湾武力統一への野心だ。毛も鄧も成し遂げられなかった台湾併合をなせば、習氏の権威は不動のものになる。
鄧は香港返還に漕ぎ着けはしたが、台湾併合はできなかった。台湾侵攻への動きに警戒を強める必要がある。



