
明治5(1872)年に日本で鉄道が開業して150年となった。近代化の先兵の役割を果たし、人々の生活の足となり、戦後の経済発展のまさに牽引(けんいん)車となってきた。赤字路線の存続問題など課題もあるが、技術革新をさらに進め、長期的視野で路線存続を図っていくべきだ。
リニア開業で新次元に
東京・新橋-横浜間を初めて蒸気機関車が走った時、その距離は29㌔だったが、2021年度の鉄道輸送統計年報によると、JRと私鉄を合わせた旅客利用路線の総延長は約2万7500㌔。年間利用者数は延べ約188億人に上り、貨物約3890万㌧が運ばれている。
技術革新による鉄道の高速化で、日本は世界の先頭を走ってきた。1964年に東海道新幹線が開業。時速200㌔以上での営業運転は世界初で「夢の超特急」と言われた。いまや最高時速は、東北新幹線「はやぶさ」の320㌔に達しているが、新幹線はスピードだけでなく、安全性や快適性、運行本数でも群を抜いている。その技術やシステムは台湾で導入され、さらにインドにも輸出される。
2027年以降には、東京・品川-名古屋間を最高時速500㌔で結ぶリニア中央新幹線も開業する予定だ。これで日本の鉄道輸送、新幹線は新たな次元に突入する。川勝平太静岡県知事が環境問題を理由にさまざまに注文を付け、当初の計画は遅れているが、川勝知事には国家戦略の観点で問題解決、計画推進に取り組んでもらいたい。
1987年の国鉄の分割民営化で経営面は大きく改善された。しかしその後の人口減やライフスタイルの変化で、地方の路線が厳しい状況に直面している。さらに近年、増加する洪水災害に見舞われ不通や廃線になる路線も出ている。
国の検討会は今年、JRの路線について乗客の利用状況が一定の基準などを下回る場合、バスへの転換も含めて検討すべきという提言をまとめた。ただ、バスへの移行は短期的な経営面では合理的な方法かもしれないが、それを利用する学生や高齢者にとって、その利便性や安心感は鉄道には及ばない。
鉄道輸送は、二酸化炭素の排出が比較的少ない輸送手段として環境面からも期待が高まっている。世界では高速鉄道網の建設計画が進んでいる。長期的観点から、地方路線の存続を図っていくべきだ。
鉄道の運行(上部)と、線路や駅舎などインフラ(下部)の担い手を分離し、会計を独立させる方式を導入している地方路線もある。しかし根本的な経営改善には、やはり利用者を増やすことが鍵となる。
観光資源として活用を
新型コロナウイルスでの入国制限がほぼ撤廃され、これから外国人観光客の本格的な流入が期待される。日本のローカル線は大きな魅力となりうる。観光資源として活用し、地域活性化に利用する道もあるはずだ。
地域おこしがすすめば、人口減の歯止めともなるだろう。自治体と住民が知恵を出し合って、経済活性化と路線存続の戦略を練るべきである。国はそのような取り組みにこそ積極的な支援を行うべきだ。



