【社説】原発運転延長へ エネルギー安保強化を図れ

経済産業省が原子力規制委員会の会合で、原則40年、最長60年と規定する原発の運転期間の延長に必要な法整備を検討する方針を表明した。

規制委も容認し、延長した場合の安全規制を議論することを決めた。エネルギー安全保障や地球温暖化対策の強化を図るためにも、法整備を進めることは妥当である。

期間上限のない米英仏

岸田文雄首相は8月、原発に関して次世代革新炉の開発・建設と共に運転期間延長の検討を加速するよう指示した。背景には、電力需給の逼迫(ひっぱく)とウクライナ危機がある。

火力発電の休廃止や異常気象が重なり、国内では数年間、電力不足が見込まれる。今夏は老朽火力発電の稼働で乗り切ったが、ウクライナ危機の影響で原油市場は混乱しており、この手法は今後、通用しなくなる恐れがある。

温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)は排出しないが、発電量が天候に左右される再生可能エネルギーの活用だけでは電力の安定供給に不安が残る。エネルギーを輸入に依存している日本にとって、原子力は「準国産エネルギー」である。厳しい電力事情の中、安価で安定的に発電でき、CO2を排出しない原発の活用が不可欠だ。

東京電力福島第1原発の事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年とし、規制委が審査で認めれば最長60年まで延長できる。期間に上限を設けたのは事故の反省を踏まえたものだが、現状のままであれば原発はいずれなくなってしまう。エネルギー安全保障上、由々しき事態だと言わざるを得ない。運転期間の延長に向けた法整備を急がなければならない。

一方、規制委は2020年7月、運転期間の長さについて「利用に関する政策判断で、規制委が意見を述べる事柄ではない」との見解を示していた。規制委の山中伸介委員長は今回、2年前の見解を踏襲したと説明した上で「期間がどう定まろうと、厳正に規制できるようなルール作りをしないといけない」と述べた。

米英仏では運転期間に上限がなく、日本と同様に規制当局が定期的に安全性を確認している。米国では80年までの認可を受けた原発もある。原子炉などを除く多くの部品は交換可能であり、高経年化に応じた技術基準を満たせば安全性を確保することは可能だ。

規制委では安全審査が長期化し、13年7月に新規制基準が施行された後、審査を申請した27基のうち再稼働したのは10基にとどまる。高経年化した原発も含め、審査の円滑化に努める必要がある。

安全性高い次世代型を

原発の運転期間延長と共に求められるのは、安全性の高い次世代型原発の開発である。

三菱重工業は先月、北海道、関西、四国、九州の4電力会社と次世代型原発を共同開発すると発表した。炉心溶融時に核燃料を受け止めて冷やす「コアキャッチャー」を設置するほか、自然災害やテロへの対策も強化する。安全性を向上させ、原発活用の推進を図りたい。