【社説】露の4州「併合」 国際法違反の暴挙を許すな

ロシアのプーチン大統領はウクライナ東・南部4州の占領地の「併合」を決め、親露派と「編入条約」に調印した。力による一方的な現状変更であり、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害して国際法に違反する行為だ。国際秩序を揺るがす暴挙は断じて容認できない。

 動員令による混乱拡大

プーチン氏が併合を決定したのは、親露派の支配地域がある東部ドネツク、ルガンスク両州と南部ヘルソン、ザポロジエ両州だ。4州には親露派やロシア軍が占領していない地域があるが、条約では4州全土を併合の対象としている。親露派は9月23~27日の「住民投票」で「約9割」が賛成したと主張し、プーチン氏も「民族自決権」に基づくと正当化した。

しかし、住民投票は多くの避難民が国内外に流出し、残された住民も軍事占領下で自動小銃を携えた兵士らに投票を強要される状況で行われた。これで民意を問うことなどできるわけがない。プーチン氏はすぐに併合決定を撤回すべきだ。

ロシアはウクライナの領土を侵害し続けてきた。ウクライナで親露派政権が崩壊した後の2014年3月には、南部クリミア半島を併合。東部における政府軍と親露派との戦闘にも軍事介入し、今年2月にはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止するために侵略した。ウクライナは旧ソ連構成国であっても現在は独立国であり、ロシアの身勝手な振る舞いは決して許されない。

もっともロシア軍は9月に入って北東部ハリコフ州から撤退するなど、欧米の兵器で反転攻勢に出るウクライナ軍を前に苦戦が続いている。ウクライナは数千平方㌔の領土を奪還した。プーチン氏には東・南部4州をロシアの「歴史的領土」と強調し、国民の愛国心を刺激する狙いがある。

ただ住民投票に合わせて発出した部分動員令でロシア社会は混乱し、9月の大統領支持率は侵攻開始後初めて8割を切った。招集を逃れるためにロシアから出国しようとする動きも続いている。4州の併合で混乱を収拾できるかは不透明だ。

一方、ウクライナはNATOへの加盟申請を表明し、徹底抗戦の姿勢を明確にしている。ロシアはNATO拡大阻止のためにウクライナを侵略したが、侵略後に北欧のフィンランドとスウェーデンが中立政策を転換して加盟を申請するなど、かえって拡大を招く結果となった。

岸田文雄首相はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、4州で実施された住民投票以降の動きについて「決して認めてはならず、強く非難する」との立場を強調。その上で「さらなる制裁を検討したい」と表明した。先進7カ国(G7)をはじめとする民主主義諸国は、対露圧力強化に向け連携を深める必要がある。

 「核使えば介入」と明言を

懸念されるのは、ロシアによる核兵器使用だ。併合を決定した4州をウクライナが攻撃した場合に「自国領土」を守るために核を用いる恐れがある。西側諸国はロシアが核を含む大量破壊兵器を使った場合、軍事介入すると明言して牽制(けんせい)すべきだ。