
英国のエリザベス女王の国葬がきょう行われる。第2次大戦後の70年間、見事な治世を実現し、世界の人々からも敬愛された女王との最後の別れとなる。日本からは天皇、皇后両陛下が参列される。
一般の人々の弔問も
亡くなったスコットランドからロンドンの国会議事堂内のホールに女王の柩は安置され、一般の人々の弔問が行われている。30時間以上も行列に並ぶのもいとわず、女王への弔意を表する人々がいることが、女王への敬愛の深さを物語っている。
英国での国葬は、第2次大戦を勝利に導いたチャーチル元首相以来57年ぶりとなる。英国では国王の葬儀は国葬となり、女王の父ジョージ6世も国葬であった。女王の死去は英国民に大きな悲しみと喪失感をもたらす一方、その治世への賛辞と国家、国民への献身に対する感謝の声が相次いでいる。
最後まで公務から離れることなく、亡くなる2日前にはトラス新首相を任命した。「生涯を国民に捧げる」という若き日の誓いを貫いた。女王の行動の根底に、その強い覚悟と使命感・責任感があった。素晴らしい笑顔やユーモアのセンス、人々への心配りなど人柄の魅力も相まって、女王の国民への愛と奉仕に対する英国民の感謝の念が、自然な形で弔意となって表れたと言える。葬儀の最後には全土で2分間の黙祷(もくとう)を行う。
ウェストミンスター寺院での葬儀には、各国の王族や国家元首などの要人を含む2000人が参列する。天皇、皇后両陛下をはじめ、バイデン米大統領やフランスのマクロン大統領も参列する。女王が世界の人々に愛されていたことの表れであるが、外交上に果たしてきた女王の存在の大きさを改めて知ることができる。
今回、天皇、皇后両陛下が慣例を破る形で参列されるのは、天皇陛下の強い思いがあったとされる。海外の王室の葬儀については平成5年、上皇、上皇后両陛下がベルギー国王の葬儀に参列された例を除き、天皇以外の皇族が参列されてきた。
女王の死去が伝えられると、陛下は女王への弔意と感謝の「お気持ち」を公表された。英国御留学当時、家族のように接してくれた女王の思い出を語られた。陛下は令和2年春、女王の招待を受け、皇后陛下と共に英国へ即位後初の海外訪問をする御予定だった。それが新型コロナウイルスの影響で延期となったことも考慮されたようだ。
両陛下の訪英中は、秋篠宮殿下が国事行為の臨時代行を委任されることも閣議で決定した。国事行為は憲法に基づき、天皇が内閣の助言と承認によって国民のために行う行為。秋篠宮殿下が臨時代行に臨まれるのは初めてのこと。
昭和天皇以来の深い関係
日本の皇室と英国王室とは、昭和天皇以来3代にわたって深い関係が築かれてきた。先の大戦では敵味方となったが、皇太子時代の英国御訪問以来、英王室との関係を大切にしてこられた昭和天皇は、戦後英国を訪問され、それに応える形でエリザベス女王が訪日した。今回の葬儀参列が日英の絆を揺るぎないものにすることを期待したい。



